東京為替見通し=日米財務相会談控え神経質な動き、米軌道修正効果の反発も限界か

 昨日の海外市場でドル円は、米中貿易摩擦が緩和されるとの期待が高まりで、米国株相場の上昇とともに全般ドル買いが先行し143.57円まで上値を伸ばした。ユーロドルは、1.1311ドル付近まで下落し、アジア時間に付けた日通し安値1.1308ドルに近づいた。

 本日の東京時間でドル円は、本日のNY時間に日米財務相会談が行われることが濃厚なことで、神経質な動きになりそうだ。ただ、財務相会談は現時点では調整中とされ、G20各国が集まっているなかで、日本の優先度はさほど大きくないこともあり、市場が期待するほどの協議内容にはならない可能性もある。

 日米財務相会談が行われた場合、これまでは為替についての議論がなければドル円が買われるシナリオになっていた。しかしながら、昨日ベッセント米財務長官が「米国は引き続き強いドル政策を維持」「関税を巡る日米交渉で特定の通貨目標を求める考えはない」などと述べたため、為替の議論がなかった場合でもドル円の買いでの反応は一時的になりそうだ。

 ドル売りシナリオとしては、プラザ合意のようなドル高是正を期待があった。しかし、短時間の会談になることもあり、本日中に為替に関する問題で合意が発表されるのは難しいのではないか。ベッセント氏は「日本が先進7カ国(G7)の合意(=為替はファンダメンタルズを映し安定的に推移するべき)を尊重することを期待する」と昨日述べた。これは日本の低金利路線を為替操作と捉えている節もあり、金利面での円安調整(日銀の金利引き上げ要望)発言が出る可能性もあるか。

 ドル全般の流れを見ると、引き続き二転三転するトランプ政権高官の発言が市場を乱高下させることになるだろう。この2日間にトランプ政権は中国への関税引き下げを示唆し、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の解任を否定した。これは、この数週間で米債・米株・米ドル売りという米トリプル安を受けて、トランプ政権が慌てて関税策やFRBの独立性の軌道修正を講じざるをえなかったことが要因だろう。

 しかしながら本日早朝のトランプ大統領の会見では、中国への関税は今後2‐3週間に設定すると述べたものの、いつ引き下げるかは中国次第と発言し、再び市場はややリスク回避の動きに戻った。

 中国外務省は昨日、米国が極端な圧力をかけながらも、同時に合意を望んでいると指摘。そのため、両国の合意は実現が不可能と述べている。米中のすれ違いが一朝一夕で解決するのは難しく、ベッセント氏が述べたように、完全な貿易協定締結には数年かかる可能性がある。

 またパウエル議長についても、早朝トランプ大統領は金利引き下げを行わないことに対して苦言を述べている。レーガン政権時のボルカー議長に対してのように、「解任」がない場合でも、「辞任」へ追い込むことは今後も十分考えられ、引き続き政権とFRBとの関係性も市場の焦点になるだろう。

(松井)
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