週間為替展望(ポンド/加ドル)-ポンド、貿易協定に関する英米協議を注視

◆ポンド、貿易協定に関する英米協議を注視
◆加ドル、BOC会合や5月雇用統計に注目
◆加ドル、裁判所判断へのトランプ政権の対応に注意

予想レンジ
ポンド円 192.00-197.00円 
加ドル円 102.50-106.50円 

6月2日週の展望
 ポンドは、英米貿易協定に関する報道を注視しながらの取引となりそうだ。来週前半にパリで経済協力開発機構(OECD)の閣僚級会合が開かれる。英国からはレイノルズ・ビジネス貿易相が出席し、米国側代表と関税削減の発効時期について話し合うもよう。今月初めに英米が締結した協定では、英国製自動車の輸出について、年間10万台までの関税を27.5%から10%に引き下げるとされた。また米国は、英国からの鉄鋼・アルミニウムに対する25%関税の撤廃も約束。しかし実際に発効はされておらず、英自動車、鉄鋼メーカーは混乱している状況だ。

 英国側の懸念材料としては、米国内の事情で協定通りの恩恵を受けられるか不透明感が高まってきたこと。米国の国際貿易裁判所は今週、トランプ関税の多くの部分を違法と判定し、大統領権限を越えたと判断した関税の差し止めを命じた。ただし、この裁定は別の通商法で課された「自動車や鉄鋼・アルミニウム」への関税には影響しない。トランプ米大統領が推す大規模な減税法案は、その財源の1つとして関税収入が念頭に置かれている。司法判断を巡るトランプ政権の対応は今後注目だが、裁判所命令の範囲外の「自動車などへの関税」は、財源確保のために維持しておきたいところ。レイノルズ貿易相の交渉は難しくなることが予想される。

 なお、英国からの経済指標は5月購買担当者景気指数(PMI)が予定されているものの、改定値であるため、速報値から大きく振れない限りは相場の動意に繋がらないだろう。

 加ドルも、前述した米国際貿易裁判所の決定を受けたトランプ政権の動きに注意を払っておきたい。薬物の流入を理由とした中国やメキシコ、カナダへの追加関税の差し止め命令は、加ドルにとってポジティブ。だが、政策の核としてきた関税を停止させられたトランプ米大統領が、次に何を言い出すか分からないという不安は市場に根強く存在している。

 6月4日のカナダ中銀(BOC)会合も注目材料。4月消費者物価指数(CPI)のコア指数が加速したことで、早期利下げ見込みが大きく後退。短期金融市場では、BOCは0.25%追加利下げを9月まで待つ(6、7月会合は据え置き)という見方も広まってきた。市場予想が分かれており、結果に対する加ドルの動きも値幅を伴った荒い動きとなりそうだ。また週末の6月6日には、5月雇用統計が発表予定。こちらは前回6.9%まで悪化した失業率の動向がポイントの1つとなる。

5月26日週の回顧
 ポンド円は192円半ばを底に買いが先行し、196円前半まで上昇。財務省の国債発行見直し検討報道やトランプ関税の差し止めが伝わると上値を伸ばした。ただ、一巡後は194円前半まで上げ幅を縮めた。加ドル円も103円半ばから105円半ばまで上昇後、104円台で伸び悩んだ。

 ポンドドルは2022年2月以来の高値を週初に更新するも、1.36ドルの手前で頭を抑えられた。トランプ関税への裁判所判断でドル高が全般進んだ場面では、1.34ドル前半まで下押した。加ドルは対ドルで、1.36加ドル後半から1.38加ドル半ばまで加ドル安に振れた。(了)

(執筆:5月30日、8:30)
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