東京為替見通し=ドル円、上値が重い展開か 米10月雇用統計や中東情勢への警戒感から

 31日のニューヨーク外国為替市場でドル円は151.84円まで下落。植田日銀総裁の定例記者会見でのタカ派的な見解や米10年債利回りが4.25%台まで低下したことが重しとなった。ユーロドルは1.0888ドルまで上昇した。ポンドドルは、月末のロンドンフィキシングでの売りが出たもようで1.2844ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表の米10月雇用統計や中東情勢への警戒感から上値が重い展開が予想される。

 今夜発表される米10月雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比+11.3万人と予想され、9月の+25.4万人からの大幅な減少が見込まれている。要因としては、ハリケーンやストライキによる一時的な混乱と指摘されている。ただし、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では特殊要因のために重要視されない、とのことである。しかしながら予想を大幅に下回るネガティブサプライズの可能性もあるため、発表まではドル円が伸び悩む可能性はある。

 米ニュースサイト「アクシオス」が、イスラエル情報機関による情報として、イランが数日以内にイラク国内の親イラン組織を通じてイスラエルに大規模な報復攻撃を準備している、と報じている。こちらも中東の地政学リスクを高めており、リスク回避の円買いが意識されそうだ。

 なお、昨日の日銀金融政策決定会合と植田日銀総裁の会見はややタカ派的だった。経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、リスクバランスが、前回リポートで指摘した「上振れリスクの方が大きい」が維持された。金融政策運営は、経済・物価見通しが実現していけば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」方針も維持された。

 植田日銀総裁は、「政策判断に時間的余裕がある」との表現が「不要になるのではないかと考え、今日も使っていない」と述べた。総裁は「金融政策の見極めに必要な時間や利上げのタイミングには予断を持っていない」とも発言している。

 植田総裁は、先週末のG20会議の後の記者会見、9月の日銀金融政策決定会合の後の記者会見、そして、石破首相との初会談の後に、「不確実性が大きい場合には、政策変更を慎重に段階的に進めたい。追加利上げを判断するのに、時間的な余裕はある」と述べていた。しかし、昨日は米経済のリスク度合いは少しずつ下がってきているとの考えから、不要になったことを示唆したことで、12月の会合での追加利上げの可能性が浮上し、ドル円の上値を抑える要因となっている。

 ところで、昨日発表された米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているPCEデフレーターの9月分は前年比+2.1%だった。8月の同比+2.3%から伸び率が鈍化し、2021年2月以来の小幅な上昇となった。CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、11月6-7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げ確率は90%付近、12月FOMCでの0.25%利下げ確率が70%超えでやや拡大した。

(山下)
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