東京為替見通し=ドル円、堅調推移か 米金利上昇と日本政治・金融政策を巡る不確実性の高まりで

 28日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧州市場で米10年債利回りの低下を受けて152.41円まで下落した後、同年債利回りが4.30%手前まで上昇したことで、153.30円台まで持ち直した。ユーロドルは1.0828ドルまで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りが4.30%手前まで上昇していることや、日本の政治・金融政策を巡る不確実性が高まったことで、底堅い展開が予想される。

 昨日のドル円は153.88円まで上昇し、7月31日の植田ショックの時の高値に面合わせした。衆議院選挙で自民・公明の政権与党が過半数を確保出来なかったことを受け、政治的な不確実性が高まる中、日本銀行は、早期の追加利上げに踏み切ることはできないだろうとの思惑から円売りが進んだ。

 植田日銀総裁は、先週末のG20会議の後の記者会見、9月の日銀金融政策決定会合の後の記者会見、そして、石破首相との初会談の後に、「不確実性が大きい場合には、政策変更を慎重に段階的に進めたい。追加利上げを判断するのに、時間的な余裕はある」と述べていた。日銀の早期の追加利上げ観測の後退が円売り圧力を強めている。

 さらに、11月5日の米国大統領・議会選挙に向けて米長期金利の上昇基調が続いていることも、ドル買い要因となっている。トランプ共和党候補とハリス民主党候補のどちらが勝利しても、両者が減税と拡張的な財政政策を公約に掲げていることが要因だ。

 昨日のNY市場では米2年債入札が低調だったこともあり、10年債利回りが4.30%手前まで上昇した。米財務省は30日に四半期定例入札の規模を発表するが、市場では、3四半期連続で総額1250億ドル規模になると予想され、米10年債利回りが5%台まで上昇する可能性も警戒されている。

 トランプ第47代米大統領が誕生した場合の「トランプノミクス2」では、関税引き上げや減税と財政出動によるインフレ率の上昇、トランプ・フレーションの可能性が高いため、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)が活発化しつつある。

 ところで、2009年8月30日の第45回衆議院議員総選挙で政権交代が起きた時は、日経平均株価とドル円は下落していた。
 ・日経平均株価、8月31日の始値10608円から11月27日の安値9076円まで1531円(14%)下落
 ・ドル円、8月31日の始値93.48円から11月27日の安値84.82円まで8.66円(9%)下落

 今回の第50回衆議院議員総選挙では、与党が過半数を確保できなかったものの、政権交代は回避できたため、リスク回避の日本株売り・円買いにはならなかったと思われる。今後は、石破降ろしの可能性、新たな連立政権の枠組み、首班指名選挙への思惑などを見極めていくことになる。



(山下)
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