東京為替見通し=ドル円、買い基調は変わらずも米CPI控え動きにくい

 昨日の海外市場でドル円は149.36円と8月15日以来の高値を更新した。ユーロドルが1.0936ドルと8月13日以来の安値を更新。米利下げペースが緩やかになるとの見方が広がる中、米長期金利の指標となる米10年債利回りが一時4.0765%前後と7月31日以来の高水準を記録し、ドル買いを促した。

 本日のドル円も引き続き買い場探しとなるだろうが、米国時間に9月消費者物価指数(CPI)が発表されることで、大きなリスクを取りにくい地合いになりそうだ。

 先週発表された9月米雇用統計以後、米長期債利回りは上昇傾向を辿り、ドルは底堅さを維持している。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、11月6-7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げ予想は7割程度まで縮小し、据え置き予想が3割弱まで拡大した。

 本日発表される米CPIが市場予想を上回れば、次回FOMCへの据え置き見込みが更に高まり、年末までの利下げ予想幅が現時点の0.50%から0.25%まで低下することも考えられる。一方、もし米CPIが予想よりも低下した場合には、ドルの頭を抑える要因になる。しかし、雇用統計後のトレンドは米金利上昇とドル買いが優勢となっていることもあり、市場の反応が大きくなるのはCPIが予想よりも上回った場合か。

 ドル買い・円売りの流れが続いているが、この流れを止める可能性があるのは、変節を繰り返す石破首相の言動か。現在のドル円上昇の要因は、米国の経済指標の好結果によるところが一つだが、石破首相が先週「現在は追加利上げをするような環境にはない」と発言したことも発端ではある。

 「石破ショック」と呼ばれるほど本邦株式市場が急落したことで、株価下落を食い止めて総選挙を優位に戦おうとの思惑が「利上げ否定」発言に結び付いたのだろうが、同時に円安を促進してしまった。円安の進行は早く、7月の日銀政策決定会合後の戻り高値150.89円も視野に入ってきた。「利上げ否定」発言の副作用が大きく、与党にとっては総選挙への悪影響を懸念する声も出てきそうだ。この円安の流れを止めるために、石破首相が再び選挙対策のために円相場へ口先介入を行うリスクが出てくるかもしれない。

 なお本日は、9月企業物価指数が発表される。8月輸入物価指数(速報値)は円高が進行したこともあり、前年比+2.6%と7月+10.8%から大幅に低下した。9月も円高水準を維持していたことで、輸入物価指数が急速に再び上昇するとは考えにくい。ただし今後、円安基調に戻った10月の同指数が高まれば、石破政権にとっては「利上げ否定」発言に対する責任論も出てくるだろう。

(松井)
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