週間為替展望(ポンド/加ドル)-加ドル、金利先安観の後退が支えに

◆ポンド、インフレが想定以上に加速で追加利下げ先送り観測高まる
◆ポンド、高まる欧州地政学リスクを警戒、ウ・露戦争の行方を見定め
◆加ドル、金利先安観の後退が支えに

予想レンジ
ポンド円 192.00-198.00円 
加ドル円 108.50-112.50円 

11月25日週の展望
 ポンドは、追加利下げ先送り観測の高まりが意識されそうだ。ただ、ウクライナ・ロシア戦争激化を受けて欧州地政学リスクへの警戒感が強まっており、積極的な上値追いもしづらい。

 20日に発表された10月消費者物価指数(CPI)は前年比2.3%上昇とイングランド銀行(英中銀、BOE)のインフレ目標2.0%を再び上回り、前月比でも予想を上回った。英金融政策委員会(MPC)が注視していたサービス部門CPIも前年比5.0%上昇と、2022年春以来の5%割れを実現した前回値から上振れた。これを受けて市場では、英中銀が早期の追加利下げについて慎重な姿勢を強めるとの見方が広まっている。12月の英MPC前に最新の雇用データやインフレ指標が発表されるものの、来月は利下げなしが既定路線だ。来年2月会合についても、利下げ見込みは優勢だが0.25%引き下げを完全に織り込むまでには至っていない。暫くは金利見通しに波及する英指標もなく、今回のCPIをベースとした動きが続きそうだ。

 また、ウクライナ情勢の悪化でロシアと北大西洋条約機構(NATO)との緊張感が高まり、NATOの中心国でもある英国への影響も懸念される。ウクライナは今週、米国製に続き英国製の長距離ミサイルをロシア領内に向けて発射した。トランプ次期米大統領が戦争の早期終結を目指すなか、ロシア側も現状の前線維持を条件に停戦協議に前向きとの報道もある。ウクライナが協議開始前に優位性を強めたいと考えているのならば、今後も西側が供与した兵器でロシア領内への攻撃が続くかもしれない。ロシアの出方次第で戦火が拡大すると、リスク回避ムードが強まるだろう。

 加ドルは、カナダ金利先安観の後退が支えとなりそうだ。19日発表の10月カナダCPIは前年比2.0%上昇と、前回値1.6%だけでなく市場予想も0.1ポイント上回った。政策決定で中銀が重視するCPI中央値やトリム値も前年比それぞれ2.5%と2.6%上昇と9月分から加速した。ヘッドラインはカナダ中銀のインフレ目標に沿った結果ではあるものの、全体的にインフレ圧力が強まったことで、12月会合で0.50%の大幅利下げの観測は後退している。

 月末にカナダ国内総生産(GDP)の発表はあるものの、それまでは加ドル相場を動意付ける材料はない。一方、米国では感謝祭の前にインフレ指標を含めた複数の経済データが明らかとなる。結果を受けたドル相場の動向や市場センチメントの強弱に左右されそうだ。
 
11月18日週の回顧
 ポンド円は196円台まで買いが先行も、ロシアが核使用基準を緩和させたことでリスク回避ムードが強まると一時193円半ばまで急落。その後、英CPIの上振れも後押しに197円後半まで切り返すも、地政学リスクが嫌気されて194円台まで再び下落した。ポンドドルは1.27ドル前半まで上昇後に1.25ドル後半まで売られた。

 加ドルは対円で109円前半を下値に111円半ばまで上昇。加インフレ加速が支えとなった。ただ、その後は110円前半まで下押した。対ドルでは加金利先安観の後退を受け、1.41加ドル付近から1.39加ドル前半まで加ドル高が進行した。(了)

(小針)
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