東京為替見通し=ドル円、トランプ政策不安で上値は重いか

 先週末のニューヨーク外国為替市場でドル円は底堅い動き。米中貿易摩擦が再燃するとの懸念から一時143.48円付近まで下押したが、アジア時間につけた安値143.44円を前に下げ渋ると144.44円まで反発した。ただ、米政権の関税政策に対する不透明感が根強いこともあって伸び悩んだ。ユーロドルは1.1313ドルまで安値をつけたが、米政策の先行き不透明感を手掛かりにしたドル売り圧力が強く1.13ドル半ばを中心に下値の堅い動きとなった。ユーロ円はドル円につれて神経質な動きと162.81円まで下押し後に163.80円台まで切り返すも、上値は重く5営業日ぶりの反落となった。

 本日の東京市場ではドル円の動意につながりそうな経済指標の発表や注目のイベントは予定されておらず、日本株や日米長期金利の動向に睨んだ動きが見込まれる。

 なお、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事の講演が予定されているが、講演内容が相場の動きに影響を与える可能性は低いか。同氏は4月下旬にインタビューで、関税が7月より前に経済に大きな影響を与えるとは考えていないと強調し、トランプ米政権の関税政策によるインフレへの影響は一時的なものにとどまる可能性が高いとの見解を示している。

 東京タイムで注目材料は乏しいが、トランプ米政権の政策に対する不安で、ドル円は上値の重い動きを予想する。トランプ米大統領は先週末に輸入される鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税を2倍の50%に引き上げる計画を表明し、4日から実施されると見込み。鉄鋼関税の引き上げは貿易戦争をさらに激化させる可能性がある。

 また、トランプ大統領は中国が相互関税引き下げのほか重要鉱物の取引に関する合意に違反したと主張し、中国に厳しい措置を取る可能性を示唆。トランプ氏は投稿で、自身が中国に一時課した超高率の追加関税によって「中国は深刻な経済危機に陥った」と指摘し、中国を「救済」するために大幅に関税を引き下げたと説明した。未だに信用力の発言を繰り返しており、トランプ米政権の信認は大きく低下している。

 先月末に4回目の日米関税交渉が行われ、赤沢再生相は「合意に向けた議論が進展している」と語ったが、「進展」の具体的な中身については言及せず、6月中旬に予定される日米首脳会談の前に改めて閣僚間で協議する意向を明らかにした。日米協議での円安是正への警戒感が払しょくされていないこともドル円の重し。ただ、ドルにも売り疲れも出ているもようで、一途にドル売りが加速する地合いにもなりにくく、ドル円の神経質な動きが続くか。

(金)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。