NY為替見通し=ドル円、米債券市場発の「トリプル安」に要警戒か

 本日のNY為替市場のドル円は、昨日4.625%まで上昇した米10年債利回りの動向を睨みながらの展開が予想される。

 昨日、米議会下院がトランプ米大統領の看板政策である大型税制・歳出法案を可決したことで、米財政悪化を巡る懸念から米10年債利回りは一時4.6247%前後まで上昇した。

 米国債券市場は、膨張する米国債の購入を期待されているが、20年債入札が不調となり、30年債利回りが5%台に乗せており、債券自警団は米国の財政赤字拡大に対して警鐘を鳴らし始めている。(※債券自警団とは、財政・金融運営の規律が緩みインフレ懸念が出てきた時、国債を売却して警告を発する債券投資家のこと)

 S&Pグローバルの「Capital IQ」モデルでは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場の価格に基づき、米国債格付けを現行水準より6段階低い「BBB+(トリプルBプラス)」に相当する、すなわち、かろうじて投資適格級にとどまる水準だと示唆している。

 米国債券市場発の「トリプル安」は、先月のトランプ相互関税発動を一時停止に追い込んでおり、今回のトランプ税制法案に対しても同様の「トリプル安」懸念が警戒されており、メモリアルデー前で短縮取引となる米債券市場の動向には警戒しておきたい。

 ウォラーFRB理事は、「市場はもう幾ばくかの財政規律を求めている」と減税による財政悪化に懸念を示しており、本日講演が予定されているムサレム米セントルイス連銀総裁、シュミッド米カンザスシティ連銀総裁、クックFRB理事の見解にも注目しておきたい。

 本日は、米関税措置を巡る3回目の閣僚級協議が開催されるが、赤沢経済再生相は「引き続き米国による一連の関税措置の見直しを強く求めるポジションは変わっていない。可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、率直かつ建設的な姿勢で協議に臨む」と述べている。
 しかし、一部新聞報道で、赤沢経済再生相が30日を軸に再訪米し、ベッセント米財務長官と4回目の閣僚級協議に臨む予定、と報じられたことで、第3回日米関税交渉でも進展が見られない可能性が高まっている。


・想定レンジ上限
 ドル円の上値目処(めど)は、144.61円(5/21高値)

・想定レンジ下限
 ドル円の下値目処(めど)は、142.81円 (5/22 安値)


(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。