週間為替展望(ドル/ユーロ)-ドル円、米インフレ指標に注目

◆ドル円、G7首脳会談に向けて米通商交渉を見極めていく展開
◆米5月CPI、PPI、米財政収支などにも注目
◆ユーロドル、ECBは利下げ休止を示唆

予想レンジ
ドル円   141.00-146.00円
ユーロドル 1.1200-1.1600ドル

6月9日週の展望
 ドル円は、引き続きトランプ関税政策を巡る不確実性が上値を抑える展開が想定される。15-17日に開催されるG7首脳会議に向けて、米国と日本及び中国との通商合意への期待感が高まっているなか、関連ヘッドラインには警戒しておきたい。トランプ米大統領(6月14日生まれ)と習中国国家主席(6月15日生まれ)が5日に電話会談を行ったが、両首脳の誕生日に向けた通商合意への期待感が高まっている。

 また、トランプ米大統領がパウエルFRB議長に対して、インフレ鈍化を理由に利下げ圧力をかけ続けていることもあり、11日の5月消費者物価指数(CPI)や12日の5月卸売物価指数(PPI)では、インフレの伸び率鈍化傾向が続いているのか否かを見極めることになる。

 11日に発表される5月財政収支では、米国の財政状況やトランプ関税の税収を確認したい。更に、米国債入札では、米国債がトリプルA格付けを失い、トランプ税制・歳出法案に米国債保有に対する報復課税が盛り込まれている中での米国債への需要を見極めることになるだろう。

 5日に米財務省が公表した「外国為替報告書」では、為替操作国の認定が見送られたものの、中国の「透明性の欠如」により、為替操作国として認定する可能性を警告した。5月には、米国が為替操作の監視リストに指定している台湾や韓国との間で、対米貿易黒字削減のためのドル安誘導という通貨協定の噂が流れ、ドル売り・円買いに波及した局面があったが、通貨協定に関する噂などには引き続き注意が必要だ。

 また、日本では今週、植田日銀総裁が見通し実現を前提に「継続して政策金利を引き上げる」と述べている。日銀の早期利上げ観測がドル円の上値を抑えており、日銀当局者の見解にも注目しておきたい。

 ユーロドルは、ラガルドECB総裁が理事会後の会見で金融緩和サイクルの終了を示唆したほか、ECB当局者が7月理事会での利下げ休止を示唆したことで底堅い展開が予想される。ただ、難航しているEUと米国との関税協議を巡る不確実性から上値は限定的だと思われる。トランプ米大統領が6月末のNATO首脳会談に出席して、「防衛費増を求める」と報じられており、欧米通商交渉と安全保障、更にはウクライナ情勢と絡めて、関連ヘッドラインには警戒。

6月2日週の回顧
 ドル円は、4月米JOLTS求人件数が予想を上回ったことを受けて144.38円まで上昇した後、5月ADP全米雇用報告や新規失業保険申請件数が労働市場の悪化を示したことで、142円台半ばまで反落した。ただ、米中首脳電話会談の前向きな結果が報じられると、143.97円まで反発するなど、方向感のない動きが週初から続いた。
 ユーロドルはECBが0.25%利下げを決定したものの、ラガルドECB総裁が金融緩和サイクルの終了を示唆したことから一時1.1495ドルまで上昇した。(了)
(執筆:6月6日、9:00)
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