東京為替見通し=ドル円、米軍によるイラン空爆の可能性に要警戒か

 19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧州市場で中東情勢の緊迫化を背景に「株安・原油高・ドル高」の様相が強まり145.77円まで上昇した後、レビット米ホワイトハウス報道官の発言「トランプ米大統領はイラン攻撃について2週間以内に決定する。トランプ氏はイランとの外交が依然として選択肢であると信じている」を受けて、中東情勢を巡る過度な懸念が和らいだことで145.35円付近まで下押しした。ユーロドルは、「有事のドル買い」で1.1455ドル付近まで下げた後、1.1500ドルまで反発した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の5月の消費者物価指数(CPI)を見極めた後は、米軍によるイラン空爆の可能性に警戒していく展開が予想される。

 ドル円の一目均衡表でのテクニカル分析では、攻防の分岐点である雲の上限145.55円付近での推移となっており、明確に上抜けていくのか、それとも抵抗帯として上値を抑えるのかを見極めていくことになる。

 昨日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が「トランプ米大統領はイラン攻撃計画を承認した」と報じ、一部報道では、米当局者の話として「米国は、近日中(in the coming days)にイラン攻撃を準備している」と報じられたことで、空爆が開始された場合の相場動向に備えることになる。
 トランプ米大統領は、昨日、「何をするべきかいくつか考えを持っているが、最終決定はしていない。私は期限の1秒前に決断を下すのが好きだ」と述べた。そして、レビット米ホワイトハウス報道官が「トランプ米大統領はイラン攻撃について2週間以内に決定する。トランプ氏はイランとの外交が依然として選択肢であると信じている」とも述べている。

 トランプ米大統領は、6月11日に「2週間以内に各国に関税率を通告する」とも述べており、2週間という時間軸の下で、トランプ関税と中東有事に備えていくことになる。

 1991年1月の湾岸戦争では、17日の新月の暗闇に乗じて、アメリカ軍を主力とする多国籍軍がイラクに空爆を開始した時は、ドル円は138円の高値から132円まで下落し、127円台まで続落した後、2月28日の戦闘終了時に132円台まで戻していた。
 米軍による軍事紛争への介入は、必ずしも「有事のドル買い」とはならないことも念頭に置き、今月の新月25日に向けて、日柄や値動きの再現の可能性には警戒しておきたい。

 8時30分に発表される5月の全国コア消費者物価指数(CPI:生鮮食品を除く)は、前年比+3.6%と予想されており、4月の同比+3.5%からの伸び率上昇が見込まれている。
 予想通りならば、日銀の早期利上げ観測を高めることになるが、今週の日銀金融政策決定会合や植田日銀総裁の見解では、トランプ関税への不確実性を理由に、政策金利の据え置きを決定しており、円債市場や円相場への影響は軽微なのかもしれない。
 日本の5月のインフレ率が予想通りに上昇していた場合は、15時40分から予定されている植田日銀総裁の挨拶に注目することになる。



(山下)
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