東京為替見通し=ドル円、上値の重さ継続か 米経済の減速懸念・本邦金利にも注目

 昨日の海外市場でドル円は142.61円まで下落。低調な米経済データが続き、米長期金利の低下とともにドル売りが進んだ。ユーロドルも1.1435ドルまでユーロ高ドル安に傾いた。ドル/カナダドル(CAD)もまた1.36CAD半ばまで弱含み。ドル安の流れに沿った他、カナダ中銀が政策金利を据え置いた影響も受けた。


 本日の東京為替市場でドル円は、昨日強まった米経済の減速懸念を背景とした上値の重さが継続か。また引き続き、トランプ関税に絡んだ報道には注意しておきたい。くわえて、本邦金利動向も目を向けておく必要がありそうだ。その材料としては朝方に発表される4月賃金データと、昼過ぎに明らかになる30年国債の入札結果となる。なお、本日はゴトー日(5・10日)であり、通常以上に実需勢のフローに振らされる場面もありそうだ。

 昨日の5月ADP全米雇用報告の弱さを受けて、明日発表の同月米雇用統計への警戒感が高まっている。ただADPと労働省調べの非農業部門雇用者数について、今年に入ってからの結果と予想の乖離を比較すると、必ずしもリンクしているわけではなく、過度に危惧する必要はないかもしれない。しかしながら、米ISM非製造業景況指数が11カ月ぶりに50を割り込んだことも鑑みると、本日についてはドルの反発力は強まりづらいか。

 弱い雇用データを受けて、トランプ米大統領がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に再び利下げを要求した。この辺りに対する金融当局者の反応も気を付けておくべきだろう。なお、CMEのフェドウォッチでは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の次回0.25%利下げは9月会合と見ており、年内には更に0.25%利下げを織り込みつつある。

 8時30分に発表される4月毎月勤労統計(現金給与総額)は、前年比予想が2.6%と修正された前回値から0.3ポイント上昇見込み。2%割れまで低下した1月分を底に持ち直し基調を確認することになりそうだ。ただし、より注目されるのが実質賃金(前年比)だろう。

 実質賃金は労働者の生活水準や購買力を把握する上で重要とされ、名目賃金から消費者物価指数(CPI)などを参考にし、物価上昇分の影響を差し引いて算出。前回3月分は上方修正されたものの1.8%減と3カ月連続のマイナスを記録した。今回もマイナスが確実視されており、3日に植田日銀総裁が述べた「経済・物価情勢の改善が見込めない中で、無理に政策金利を引き上げる考えはない」を裏付けることになるか。

 3日に財務省が実施した10年国債の入札は予想以上に強い結果となった。ただ需要動向の不透明感が深まっている超長期債の入札を控え、債券市場は警戒感を強めているもよう。先月の20年と40年国債の入札が不調だっただけに、本日の30年国債が想定以上に悪いとなれば、再び超長期ゾーンの金利が不安定な動きに陥るだろう。そうなると、円相場も右往左往させられる場面がありそうだ。


(小針)
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