東京為替見通し=ドル円、神田シーリングの強度を見極める展開か

 22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが3.7138%前後まで上昇したことで、140.36円から142.50円付近まで反発した。ユーロドルは米金利の上昇や9月ユーロ圏消費者信頼感指数速報値が▲28.8と過去最低を記録したことなどで0.9812ドル付近まで弱含みに推移した。ユーロ円は138.71円から140.24円付近まで反発した。

 本日のアジア外国為替市場のドル円は、東京市場が休場のため閑散取引の中、昨日の145円台でのドル売り・円買い介入の意図を探る展開が予想される。

 すなわち、昨日の1998年6月以来のドル売り・円買い介入は、急激な円安のスピードを抑制する措置なのか、あるいは、神田財務官が145円という防衛ライン「神田シーリング」を設定したのかを見極めることになる。
 本邦通貨当局がドル売り介入で使用できる8月時点での外貨準備高は、1兆2921億ドル、外貨預金は1361億ドル、7月時点での米国債保有高は1兆2343億ドルとなっている。
 おそらく、昨日のドル売り・円買い介入の原資は、すぐに売ることができる外貨預金は1361億ドルを取り崩したのではないだろうか。

 昨日のドル売り・円買い介入に関しては、気掛かりな点が2つあった。
 まず1つ目は、山崎元財務官が「過度な為替相場の変動に対して当局の警戒レベルが上がっている。先週や先々週のように短期間で5円程度動く場合は介入をやっても全然おかしくない。当局がいつでも介入できるように臨戦態勢に入っている」との見解を示したことである。山崎元財務官は、ドル円が130円台に乗せてきた時、国が信認を失うことで起きる「悪い円安」との見方を否定していた。そして、為替水準への影響を狙った政府の円買い介入や日銀の金融政策の変更といった政策は採るべきでない、と主張していた。山崎元財務官は、2003-04年の円高局面で、為替市場課長として、神田課長補佐と共に、35兆円規模の円売り・ドル買い介入を断行した人物である。
 おそらく、神田財務官から、145円台辺りでドル売り・円買い介入を断行することを聞いていたのかもしれない。

 そして、2つ目が9月22日というのは、市場関係者にとって忘れられない「プラザ合意」記念日だということである。
 神田財務官は、G-5財務相・中央銀行総裁会議「プラザ合意」でドル売り・円買いの協調介入が開始された37周年記念日に、145円という「神田シーリング」を設定したのかもしれない。

 しかしながら、日銀が世界で唯一のマイナス政策金利(▲0.10%)を維持し、他国の中央銀行がインフレ抑制のために金融政策の正常化路線を邁進していることで、ドル売り・円買い介入による円安抑制の効果はない、と思われる。
 ドル円のテクニカル分析では、トリプル・トップ(144.99円・144.96円・145.90円)を形成しつつある。



(山下)
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