東京為替見通し=ドル円、今夜のパウエルFRB議長講演控えて神経質な展開か

 7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧州時間に144.99円まで上昇したものの145.00円のバリアオプションの防戦売りなどに上値を抑えられ、米10年債利回りが3.2482%前後まで低下したことで、143.68円付近まで反落した。ユーロドルは、プーチン露大統領が停止中の「ノルドストリーム」について「タービンがあれば明日にも供給を再開する」と発言したことで欧州の天然ガス価格が急落し、1.0011ドルまで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演で20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅を見極めることで、神経質な展開が予想される。

 昨日のドル円は、国内金融機関の仕組債のノックアウトトリガー(144.00円・144.50円)への買い仕掛けで144.99円まで上昇したものの、145.00円の防戦売りに上値を抑えられた。

 昨日は、松野官房長官が「最近の為替市場は急速で一方的な動きみられ、『憂慮』している」と円安を牽制し、6月の三者会合以来の「憂慮」という牽制文言を表明した。しかし、6月の三者会合の「憂慮」に対しては、米国財務省が為替報告書を発表して、円買い介入を牽制したように、今回も、グウィン米財務省報道官が円相場の急落を止めるための為替介入に慎重な姿勢を示している。

 ドル円は、日銀の大規模金融緩和政策の長期化とFRBの金融引き締め政策の長期化により、1998年8月の高値147円台を目指す上昇トレンドが続いている。黒田日銀総裁は「賃金上昇が伴うインフレ目標2%実現」までは、強力な金融緩和を粘り強く続けていくと述べ続けている。日本は欧米の金融関係者から「ジャパニフィケーション(日本化)」と呼ばれる、低成長、低インフレ、低金利が常態化しており、給与水準の上がらない最大の要因になっており、過去20-30年間、日本の賃金は横ばいが続いている。すなわち、今後も日本の賃金が上昇する可能性は低いことで、日本銀行の大規模金融緩和政策、イールドカーブコントロール(YCC)による10年国債利回りの0.25%以下への抑制は続く可能性が高いことになる。

 一方で、パウエルFRB議長は、インフレが抑制されるまで金融引き締め政策を継続する、と述べている。本日のパウエルFRB議長の講演は、20-21日のFOMCに向けて、今週末からブラックアウト期間に入ることで、これまでの雇用と物価データを受けた利上げ幅への言及に注目することになる。地区連銀経済報告では、物価の伸びの鈍化の兆候が見られる、と指摘されている。ウォールストリート・ジャーナル紙のFEDウォッチャー、ニック・ティミラオス記者は、今年2回のFOMCでの利上げ幅を正確に予想していたが、昨日は、「20-21日のFOMCでは0.75%の利上げを決める見通しだ」と報じている。
 また、7月のFOMCでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジの上限を2.5%に引き上げた際、パウエルFRB議長は、「中立金利の長期的な推計に達した」と述べていた。本日の講演では、中立金利水準への言及にも要注目となる。もし、中立金利水準が上方修正された場合、現在市場で予想されているFF金利のターミナルレート(利上げの最終到達点)4.00%程度を裏付けることになる。

(山下)
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