東京為替見通し=ドル円、米8月失業率上昇でもFRB高金利政策長期化で底堅い展開か

 2日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米8月非農業部門雇用者数が前月比+31.5万人と予想を上回ったことで140.80円まで上昇後、失業率の上昇や平均時給の鈍化を受けて米10年債利回りが3.17%台まで低下したことで139.92円付近まで下押しした。ユーロドルは米10年債利回りの低下で1.0034ドルまで上昇後、「ノルドストリーム1」の再開延期を受けて0.9945ドル付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米国8月失業率が3.7%へ上昇していたものの、FRBの高金利政策の長期化観測から底堅い展開が予想される。

 アジア時間の材料としては、10時15分頃に中国人民銀行が設定する中国人民元の対ドル基準値では、「中間値」が9営業日連続で市場予想よりもドル安・人民元高に設定されるのか否かに要注目か。

 また10時45分に発表される8月Caixin中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は、54.0と予想されており、7月の55.5からの低下が見込まれている。中国の景況感悪化が警戒される中、ネガティブサプライズに警戒しておきたい。

 米国8月の非農業部門雇用者数は前月比+31.5万人と発表され、7月の改定値(前月比+52.6万人)から増加幅が減少し、失業率は3.7%で7月の3.5%から上昇した。8月の労働参加率が、2020年3月以来の高水準となる62.4%まで上昇したことで、失業率を上昇させて、平均時給が鈍化していく可能性が示唆されている。

 パウエルFRB議長は、7月27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見や8月26日のジャクソンホール会合での講演で、「今後の利上げについてはデータ次第」と述べた。よって、来週13日に発表される米国8月の消費者物価指数を見極めることになる。

・7月雇用統計(8/5発表):失業率3.5%で0.75%の利上げを正当化した
・7月消費者物価指数(8/10発表):前年比+8.5%へ鈍化した
・7月PCE総合価格指数(8/26発表):前年比+6.3%へ鈍化した
・8月雇用統計(9/2発表):失業率は上昇し平均時給は鈍化した
・8月消費者物価指数(9/13)

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月20-21日のFOMCでの0.50%の利上げ確率は43.0%、0.75%の利上げ確率は57.0%となっている。フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場では、米連邦準備理事会(FRB)が来年3月までに政策金利を3.85%近辺まで引き上げると予想されている。

 パウエルFRB議長がジャクソンホール会合での講演で、高金利の状態が当面続くことを示唆しており、ドル円の上昇基調が続くことには変わりがないと思われる。

 日本銀行は、世界の主要中銀で唯一のマイナス政策金利を継続しており、イールドカーブコントロール(YCC)により10年債利回りを0.25%以下に抑えている。一部の海外投機筋は、円・キャリートレードを活発化させつつあり、外国銀行在日支店の本支店勘定を通じて、低金利の円を調達して、高金利通貨で運用している。

 日銀とFRBの金融政策の乖離、日米10年債利回り格差の拡大を背景に、ドル高・円安トレンドが続いており、日本の消費者は「悪い円安」による輸入物価上昇に苦しんでいる。しかし、本邦通貨当局は、120円台から140円台までの円安相場を「注視」しているだけであり、1998年8月の高値147円台が射程に入りつつある。

(山下)
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