東京為替見通し=ドル円、米8月雇用統計への思惑から底堅い展開か

 29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、ポジション調整の売りで138.27円付近まで下押しした後、138.88円付近まで反発した。ユーロドルは、フォンデアライエン欧州委員長発言「電力市場への緊急介入を準備」などで欧州の天然ガス価格が下落したことで、1.0029ドルまで上昇した。ユーロ円も138.97円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今週末9月2日に発表される米国8月の雇用統計への思惑から底堅い展開が予想される。

 パウエルFRB議長は、先週26日のジャクソンホール会議での講演で、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の後の記者会見の時と同様に、「9月会合での決定は、入手するデータと変化する見通しの全体像に左右される」と述べた。これまで発表された3つの雇用と物価のデータは、7月雇用統計は0.75%利上げを正当化し、伸び率が鈍化した消費者物価指数とPCE総合価格指数は0.75%利上げ確率を低下させている。8月の雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比+30万人の増加が予想されており、予想以上ならば、9月FOMCでの0.75%の利上げ確率が高まり、予想未満ならば、0.50%の利上げ確率が高まることになる。しかしながら、インフレ抑制のために利上げ路線が継続されることは既定路線であり、パウエルFRB議長が、インフレが抑制されるまで「当面」金融引き締めが必要との見解を示したことで、ドルは上昇トレンドを継続することが見込まれる。
 一方で、米2年債と10年債の利回り格差はマイナス31bp程度まで拡大しており、長短国債利回りが逆転する「逆イールド」の状態が続いている。2年債利回りの3.48%台は、市場が想定しているターミナルレート(利上げの最終到達点)である3.80%程度までの上昇を示唆し、10年債利回り3.1%台は、FRBが利下げに転換する可能性を示唆している。
 
 本日は、中国人民銀行(中央銀行)が日本時間10時15分頃に設定する中国人民元の中心レートに注目したい。
 中国人民銀行は、今月、景気支援策として利下げに踏み切り、輸出振興のためにある程度の元安を容認する姿勢を強めているとみられる。市場では、2020年7月以来の7元台復帰が見込まれているが、中国国家外国為替管理局(SAFE)は急激な元安は望んでおらず、先週も複数の銀行に対して積極的な人民元売りを控えるように警告したと報じられている。そして、中国人民銀行は、昨日まで4営業日連続で、人民元の中心レートを市場予想より元高方向に設定しており、急激な元安に歯止めをかけている。本日も、市場予想より元高方向に設定されるのか否かに要注目か。

(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。