東京為替見通し=ドル円 米長期金利の上昇一服で伸び悩み、豪ドルは経済指標に要注目

 28日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが一時3.9806%まで上昇したことで136.92円まで上値を伸ばした。しかしその後、予想を下回った2月米シカゴ購買部協会景気指数や2月米消費者信頼感指数を受けて135.74円まで反落した。ユーロドルは1.0645ドルを高値に1.0574ドルまで売り戻された。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りが3.9%台で上昇が一服していることで伸び悩む展開が予想される。

 昨日のドル円は136.92円まで続伸したものの、200日移動平均線(※28日付け137.18円)の手前で反落しており、米10年債利回りも3.9%台で足踏みしている。ドル円が200日移動平均線を上抜けて140円台に向けた上昇トレンドを回復するには、米10年債利回りの4.0%台乗せなどの援軍が必要なのかもしれない。

 日米の金融政策の乖離観測から、90日移動平均線(※28日付け135.70円)付近では下げ渋る展開となっている。ただドル強気派にとっての懸念材料は、90日移動平均線が200日移動平均線を下抜けるというデッド・クロスが出現していることになる。

 昨日発表された米国2月消費者信頼感指数は102.9となり、予想の108.5を下回り、1月分も速報値の107.1から106.0へ下方修正された。一部の市場筋やバーキン米リッチモンド連銀総裁が指摘しているように、1月の米国経済指標がポジティブサプライズだった背景には1月特有の季節要因による数字だった可能性がある。

 来週10日に発表される米国2月の非農業部門雇用者数が前月比+20.0万人で1月の前月比+51.7万人から大幅に減少すると予想されている。昨年1月の非農業部門雇用者数は速報値が+46.7万人だったが、+36.4万人へ下方修正されている。

 また、9-10日に開催される黒田日銀総裁にとっての最後の日銀金融政策決定会合では、イールドカーブ・コントロール(YCC)の許容変動幅が拡大される可能性が警戒されており、ドル円の上値を抑える要因となりつつある。昨年12月のYCCの許容変動幅の±0.5%への拡大による市場の混乱の再現を、日銀新体制ではなく現体制で引き受けるのではないか、との憶測らしい。

 昨年末で退任したイングべス・リクスバンク総裁は、17年間の任期中に、世界で初のマイナス金利を導入し、マイナス金利を解除してテデーン・リクスバンク総裁へ引き継ぎ、新総裁は3.0%まで利上げしている。10年間日銀総裁の座にあった黒田日銀総裁もYCCを導入し、許容変動幅をある程度まで拡大して金融政策正常化への扉を開くのではないだろうか。

 植田次期日銀総裁候補は、2月27日の参議院での所信聴取で、「金融仲介機能が阻害されているとは思えない。リバーサルレートにはまだ達していない」と述べた。リバーサルレートとは、金融緩和で金利が大幅に低下し、ある水準を下回るとかえって副作用が大きくなり金融仲介機能が阻害される金利水準である。

 2016年にYCCが導入されたのは、10年債利回りが低下し過ぎて金融仲介機能が阻害される可能性を排除するためだったが、リバーサルレートとして下限が設定された。植田次期日銀総裁候補がYCCの下限(=リバーサルレート)に言及した背景にも警戒しておきたい。

 9時30分に発表される10-12月期豪GDPや1月豪消費者物価指数(CPI)で、7日の豪準備銀行(RBA)理事会での利上げ幅を見極めることになる。10-12月期豪GDPの予想は前期比+0.7%、前年比+2.7%、1月豪CPIの予想は前年比+8.0%で、12月の前年比+8.4%からの伸び率鈍化が見込まれている。ロウRBA総裁は、先日、「インフレのピークには達していない。数週間のうちに経済情勢を再評価する」と述べていた。

 昨日発表された豪1月小売売上高は予想を上回る前月比+1.9%だった。本日の指標も強めのようであれば、追加利上げ観測が高まることになる。2月7日の豪準備銀行(RBA)議事要旨は、引き続き利上げを示唆した内容だった。



(山下)
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