東京為替見通し=ドル円、日米金融政策の乖離観測で底堅い展開か

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めの長期化観測と日銀新体制による現状の緩和策維持の見通しから堅調推移が予想される。

 本日13時10分からは参院議院運営委員会において、植田日銀総裁候補への所信聴取・質疑が予定されている。24日の衆議院での内容とほぼ同じだと思われるが、関連ヘッドラインには警戒しておきたい。

 米国1月の消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)に続き先週は、FRBがインフレ指標と注視しているPCE価格指数でも、インフレ抑制傾向のペースが鈍化しつつある可能性が示された。先週末は米10年債利回りは3.97%台まで上昇し、ドルも全面高の展開となっている。

 米国1月の総合PCE価格指数が前年比+5.4%、前月比+0.6%、コア指数も前年比+4.7%、前月比+0.6%とインフレ抑制のペース鈍化が示された。これを受けてFF金利先物市場では、6月までにFF金利が5.25-5.50%まで引き上げられ、より長い期間にわたり高金利水準が維持されるとの見方が強まっている。

 一方で日銀新体制の金融政策は、植田次期日銀総裁候補が24日の所信聴取で、イールドカーブコントロール(YCC)の副作用や上場投資信託(ETF)の問題点に言及しながらも、現状の金融緩和政策の維持を表明した。これらにより、日米金融政策の乖離観測を受けたドル高・円安トレンドが再開しつつある。

 ドル円の目先の上値の関門は、200日移動平均線の137.14円や昨年12月20日のYCC許容変動幅拡大ショック時の高値137.48円付近にある。

 そして、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性にも警戒しておきたい。本邦通貨当局はドル高・円安の相場水準だけなく、ボラティリティーを抑えるという名目で円買い介入を断行しており、昨年9月と10月の介入は、ボリンジャー・バンドでの+2シグマ超えで断行されていた。米国財務省報道官は、当時「日銀は外為市場に介入した。このところ高まっている円のボラティリティーを下げることを目的とした行動だった理解している」と述べ、ボラティリティー抑制のための円買い介入を容認していた。

 本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の水準を検証すると、ボリンジャー・バンドのミッドバンドに一目・基準線(過去26日間の中心値)とほぼ同様の「26日」移動平均線を使用し、標準偏差「+2σ」に接近したボラティリティー上昇局面で円買い介入を断行していることが観察される。

 昨年9月22日の第1弾の円買い介入(2兆8382億円)の時の一目均衡表・基準線は140.28円であり、高値との乖離率は3.8%だった。
 10月21日の第2弾の円買い介入(5兆6202億円)の時の一目均衡表・基準線は146.16円であり、高値との乖離率は3.8%だった。
 10月24日の第3弾の円買い介入(7296億円)の時の一目均衡表・基準線は146.16円であり、高値との乖離率は2.4%だった。
 本日の一目均衡表・基準線は132.31円、3.8%の乖離は137.30円台となる。

(山下)
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