東京為替見通し=ドル円、上値が重い展開か 低調だった米10月雇用統計受け

 3日のニューヨーク外国為替市場でドル円は149.21円まで下落した。弱い10月米雇用統計を受けて「米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルが終了した」との見方が強まり、米10年債利回りが一時4.4798%前後まで低下した影響を受けた。ユーロドルは1.0747ドルまで上昇、ユーロ円は160.40円まで上げ幅を広げた。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、低調な米10月雇用統計を受けた米10年債利回りの低下により上値が重い展開が予想される。

 米10月の雇用統計(失業率:3.9%、非農業部門雇用者数:前月比+15万人)を受けて、米10年債利回りは一時4.47%台まで低下。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、来年2024年の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ開始時期に対する見通しを7月から5月に前倒ししている。

 また、米連邦準備理事会(FRB)の元エコノミストであるクローディア・サーム博士が提唱した「サーム・ルール: Sahm Rule」では、リセッション(景気後退)入りリスクが高まりつつあるようだ。米失業率の「3ヵ月移動平均(※3.833%)」と「過去1年間の最低水準(※3.4%)」の差が0.5%以上になった場合、1年以内にリセッション入りするとの説だが、10月時点では0.433%となっている。

 さらに、7月にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が、起業・廃業モデルなどを理由に、NFPが労働市場を過大評価している可能性を指摘した懸念が再び浮上するのかもしれない。10月の雇用統計では、12.2万の会社・政府機関などの事業所調査(Establishment survey)での非農業部門雇用者数(Non-Farm Payroll)は前月比で15万人増加していたが、6万世帯の家計調査(Household survey)では、就労者数は34.8万人減少していた。

 中東情勢に関しては、イスラエルのアミハイ・エリヤフ文化遺産担当相が、パレスチナ自治区ガザへの核兵器使用は「選択肢の一つだ」と述べたことが波紋を広げている。もし、レバノンを拠点とする武装組織ヒズボラが介入して「第二戦線」が開かれた場合、そして核保有国のイランが介入して、「第三戦線」が開かれた場合、戦術核が使用される可能性が高まることになる。

 現状でのドル売り・円買い材料としては、以下の通りとなる。
・米国議会での11月17日のつなぎ予算の期限に向けた2024年度予算案採決への警戒感
・米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクル終了観測
・日本銀行の金融政策正常化

 ドル買い・円売り材料は、以下の通り。
・中東紛争が第5次中東戦争まで拡大して、石油ショックが引き起こされる可能性
(1973年の第4次中東戦争、第一次石油ショックでの円建て資産トルプル安の再現)


(山下)
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