東京為替見通し=ドル円、日銀・政策正常化への思惑から軟調推移か 今晩は米雇用統計

 7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は147.59円まで下落後、148.30円付近まで反発する場面があった。米10年債利回りの上下につれ、戻した場面では米株上昇も支えとなった。ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)が政策金利を据え置いた後に1.0868ドルまで下落。一巡後は、ラガルドECB総裁発言「今回の会合で利下げは議論しなかった」を受けて1.0949ドルまで反発した。ユーロ円は160.56円まで下落後162.14円付近まで切り返した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米2月雇用統計への警戒感や3月日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測などから上値が重い展開が予想される。

 昨日は1月の実質賃金の改善や中川日銀審議委員の発言を受け、3月日銀金融政策決定会合でのマイナス金利解除観測が一段と高まり、海外投機筋による大量の円の買い戻しを誘発した。中川委員は、日本の経済・物価情勢は2%の物価安定目標の実現に向けて「着実に歩を進めている」と述べた。

 昨日発表された1月の実質賃金は前年同月比0.6%減とマイナス幅が13カ月ぶりの水準に縮小した。そして、日本最大の労働組合の全国組織である連合は、今年の春闘における参加労組の賃上げ要求が5.85%と30年ぶりに5%を上回ったと発表した。

 賃上げ率が4.5%程度になった場合、実質賃金はマイナス圏からプラス圏に浮上することで、日本銀行が金融政策正常化の条件としていた「賃金の上昇を伴う形」での2%の「物価安定の目標」に到達することになる。

 なお翌日物金利スワップ市場(OIS)では3月マイナス金利解除の確率が一時80%近くまで上昇し、オプション市場では145円のドルプットの取引が活発化した。

 先日時事通信が、3月18-19日の日銀金融政策決定会合で、少なくとも1人がマイナス金利解除が適切だと意見表明する見通しと報じていたが、その候補として高田日銀審議委員と中川日銀審議委員の可能性が高まっている。先日、ハト派の高田日銀審議委員が、マイナス金利解除などの条件となっている2%の物価安定目標の実現が「見通せる状況になってきた」と述べた。
 
 さらに植田日銀総裁は、2%の物価安定目標の実現が見通せる確度について「引き続き少しずつ高まっている」と述べた。賃金と物価の好循環が強まり、目標実現が見通せる状況に至れば「マイナス金利政策やイールドカーブコントロール(長短金利操作)の枠組みなどさまざまな大規模緩和策の修正を検討していくことになる」との見解を改めて示した。

 なおパウエルFRB議長は、半年に一度の上院銀行委員会での議会証言で、FRBが利下げに着手するために必要なインフレ低下に対する確信は「そう遠くない(not far)」将来に得られるとの、ややハト派的な見解を示した。

 今夜発表される2月米雇用統計の予想は、非農業部門雇用者数が前月比+20.0万人、失業率が3.7%、平均時給が前月比+0.3%、前年比+4.4%。2月のISM製造業・非製造業の雇用指数、消費者信頼感指数での雇用指数は雇用市場の悪化を示していたことで、雇用統計がネガティブサプライズとなった場合は、パウエル議長の「確信」が得られることになる。

(山下)
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