NY為替見通し=円買い需要乏しく円安継続か、米10年債入札には注目

 本日のNY市場でのドル円は、引き続きドルの買い場探しは変わらないと思われる。今週は米国時間では市場を動意づける経済指標の発表等が少ないことで、米国市場が積極的に市場をけん引するような動きを見せていない。NYの市場参加者からすると、連日にわたりアジア時間にはドル買い・円売りが優勢になっていることで、敢えてこの流れの反対方向を仕掛けても、アジア時間に入ると再びドル円が買い支えられることになる確率が高いことでドル円の下押しは限られるか。

 円安の流れを変えられないとの予想は主に3点。1点目はそもそも円買い需要が少ないこと。本邦当局者は、ファンダメンタルズに沿った動きではないとみなしているが、ここ最近の円売りは実需勢が中心で、投機ではない動きが主になっている。為替介入と利食いの円買い以外は、依然として円売り意欲の方が強い流れは変えられない。

 2点目は米国サイドが円買い・ドル売り介入に否定的な見解を示していること。大統領選挙の争点がインフレでもあることで、インフレを引き起こす自国通貨(ドル)安を敢えて賛同する声はバイデン政権からは聞こえてこない。先週末もイエレン米財務長官が為替介入に対しては「まれ」であるべきとくぎを刺している。

 3点目は、本邦のドル売り介入には限界説が流れていること。今年の2回の為替介入で8兆円から9兆円の大規模の外貨をすでに利用したとされている。本邦の外貨準備高は約200兆円あるものの、米債を積極的に売らない場合は、ドル売り介入に利用できるものは、これまでの介入と同規模程度ならば7-8回程度しか余裕がないとの予想もある。

 市場では、協調介入が期待できないことで、昨年6月にトルコ中銀がトルコリラの買い支えをしたにも関わらずリラが暴落した「リラショック」、1992年にイングランド銀行(BOE・英中銀)が執拗にポンド買い介入を行ったのにもかかわらず、ジョージ・ソロス氏をはじめとしたファンド勢の売り圧力にはかなわず、ポンドが暴落し英国が欧州為替相場メカニズム(ERM)を離脱した「暗黒の水曜日(Black Wednesday)」など、中銀が負ける(通貨防衛を諦める)リスクもあることを頭に入れ始めている。市場参加者も円安の流れが止まらないことで、これらのリスクを避けるために、ドル円が小幅に下がった場合はすかさずドル買い・円売りを行う流れが続きそうだ。

 なお、本日は米国からMBA住宅ローン申請指数、3月米卸売売上高などの経済指標が発表されるが、これらの指標では通常は市場が動意づくことはない。他のイベントではNY午後の10年債入札の結果次第で、債券利回りが上下する可能性もあることで注目したい。
 また、ジェファーソン米連邦準備理事会(FRB)副議長、コリンズ米ボストン連銀総裁、クックFRB理事が本日は講演を予定している。

・想定レンジ上限
 ドル円は、5月1日NY時間引け間近に行われた介入後の戻り高値156.28円。

・想定レンジ下限
 ドル円は、これまでの本日安値154.55円。その下は7日安値153.86円。


(松井)
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