東京為替見通し=ドル円、本邦当局の為替介入への警戒高まる 防衛ラインを見極め

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は155.68円まで買われた。米10年債利回りの上昇で日米金利差を意識した円売り・ドル買いが優勢となった。欧州株相場の底堅さも背景にユーロ円は167.35円まで上値を伸ばした。ユーロドルは1.07ドル半ばを中心に方向感がでなかった。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒していく展開が予想される。昨日は政府関係者が、政府・日銀が4月29日と5月2日に為替介入を行ったと述べた。

 4月29日、「昭和の日」で東京市場が休場の日に行われた円買い覆面介入は、東京時間午後1時過ぎに、ドル円が160.17円まで急騰した後の159円台で実施された。神田財務官が「激しい為替変動が国民経済に与える影響を看過し難い」と述べたことで、160円が「第1次防衛ライン」だと想定できる。その後、午後4時頃、ドル円が157円台まで反発した局面で、再び円買い覆面介入が実施され、ドル円は154.54円まで下落した。

 そして、5月2日の早朝に米連邦公開市場委員会(FOMC)声明が発表された後の5時過ぎに、ドル円が157円付近で推移していた頃、円買い覆面介入が実施され、ドル円は153.04円まで下落した。おそらく、157円が「第2次防衛ライン」なのかもしれない。
 
 2日の介入のタイミングは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻しの水準だった。本邦通貨当局は、円安阻止のための防衛ラインを設定して、円の押し上げ介入を実施していると想定できる。フィボナッチ・リトレースメント61.8%戻し(157.99円~151.86円)である155.65円付近に「第3次防衛ライン」が設定されている可能性はありそうだ。

 本日の注目水準としては、4月29日の年初来高値160.17円から3日の安値151.86円までの下落局面からの半値戻しである156.02円。一目均衡表・転換線でもあり、重要なレジスタンスとして意識されている。

 なお鈴木財務相は昨日、「過度な変動に必要な対応を取る際、介入の原資が制約になるとは認識していない」と述べた。本日は、4月末の日本の外貨準備高が発表されることで、4月29日のドル売り・円買い覆面介入の原資を見極めることになる。3月末の外貨準備高は1兆2906億ドル、外貨預金は1550億ドル、証券は9948億ドルだった。2022年秋のドル売り・円買い介入(約623億ドル)の時は、米短期国債(Tビル)が売却されていた。

 米財務省のデータによると、日本は2月末時点で1兆1679億ドルの米国債を保有しており、米国以外で世界最大の保有国であるものの、米国債発行残高全体の4%程度に過ぎない。ちなみに、最大の米国債保有機関は、米連邦準備理事会(FRB)であり、5月1日時点で3兆8749億ドルとなっている。ドル売り・円買い介入の原資に、米国債を売却した場合、25兆ドルの米国債市場にとっては「大海の一滴」にとどまる。

(山下)
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