東京為替見通し=ドル円は米10年債利回り上昇で堅調推移だが、円買い介入には要警戒か

 29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、低調な米国債入札を背景に米10年債利回りが4.63%台まで上昇したことで157.71円まで上昇した。ユーロドルは5月独消費者物価指数(CPI)速報値が前月比で予想を下回ったことや米10年債利回りの上昇を受けて、1.0800ドルまで下落した。ユーロ円はユーロドルの下落につれた売りで170.21円付近まで下押しした。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米10年債利回りの上昇を受けて堅調推移が予想されるものの、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 5月23-25日、イタリア・ストレーザで開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議での為替に関する声明文では、為替市場の過度な変動は経済の安定に悪影響を与えるとした過去の合意が再確認され、「明確な『コミュニケーション』を通じて負の波及効果を抑えるよう努める」などとも記された。

 5月23日、イエレン米財務長官は「介入は稀であるべきで、実施には事前の『コミュニケーション』が適切だと考える。そして介入するのであれば、主に為替市場のボラティリティーへの対応であるべきだ」と本邦通貨当局による為替介入に釘を刺した。
 5月24日、神田財務官は「日本から為替について投機的な動きによる過度な変動には引き続き注意が必要であることを伝えた」ことを明らかにした。「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に対して悪影響を与えるとの考え方に沿って、適切に対応することが重要である」と述べた。そして、米国を含め各国当局と緊密に連絡を取り合っていると述べ、介入が稀であることが望ましいのは言うまでもないとした上で必要な場合には適切に対応すると強調していた。

 ドル円の157円台は、4月29日の159円台の第1弾介入に続く第2弾介入、そして5月2日未明の第3弾介入という防衛ラインだと思われることで、本日も警戒しておきたい。

 日本の新発10年債利回りは、植田日銀総裁や内田日銀副総裁の発言を受けて、6月13-14日の日銀金融政策決定会合での金融政策正常化、追加利上げや国債買入オペの減額、撤廃の可能性が高まったことで、2011年12月以来の高水準である1.07%台まで上昇しており、円買い要因となる。
 一方で、米10年債利回りは、米国のインフレへの警戒感から、4.60%台まで上昇しており、ドル買い要因となっている。

 岸田首相は、支持率を回復するために、6月後半にも決定する「経済財政運営と改革の基本方針(「骨太の方針」)」で、円安是正策としてのレパトリ減税策を打ち出す可能性がある、と報じられていた。減税の対象と想定しているのは、日本企業などが海外子会社などから得た「対外直接投資収益」の約20兆円とのことである。
 昨日は、自民の財政規律派が、「骨太の方針」の提言案に、円の信認と金利上昇を懸念する文言を盛り込んだ、と報じられた。
 円の信認への警戒感が、円安抑制のためのレパトリ減税策となる可能性も留意すべきかもしれない。

(山下)
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