東京為替見通し=円安阻止の手段乏しくトレンド継続か、ユーロ・ランドの動きにも注目
先週末のNY市場でのドル円は、5月の米PCEデフレーターが市場予想に沿う形で鈍化したことが分かると、全般ドル売りが先行し、一時160.26円まで値を下げた。ただ、その後発表された6月米シカゴ購買部協会景気指数や同月米ミシガン大学消費者態度指数確報値が予想を上回ったことや、ロンドンフィキシングに絡んだ円売りのフローが観測されたこともあり、160.96円付近まで持ち直した。ユーロドルは1.06ドル後半まで下押ししたが、フィキシングの買いで1.0725ドルまで買い戻された。
本日のドル円相場は、引き続き円安基調は変わらないか。先週28日には1986年12月以来となる161.27円を記録したドル円だが、依然として円を積極的に買う材料は不足している。
先週初までは160円台が「神田シーリング」などと、ドル円の上値の防戦ラインと囃し立てていた一部市場関係者もいたが、いざ160円台に乗せるとすでに160円台に目が慣れてきてしまっている。今後も緩やかな円安が進行した場合は、その流れを止める手段が乏しく、円の売り場を探している市場参加者がまだ多いだろう。先週のロンドンフィキシングを見ても分かるように、投機的な円売りだけではなく、実需の円売りが根強いのが現状だ。また、一部では先週取引されていた158円台まで円高が進めば、円売りを仕込みたいという声も出ているようだ。
円安の進行が止まらないのは、本邦通貨当局者が「為替の過度な変動は望ましくない」「最近の急速な円安進行に関しては深刻な懸念を有する」と円安懸念を表明しているものの、円安を止める手段が枯渇していることだ。6月の日銀政策決定会合で、今月(30-31日)の会合で長期国債の買い入れの減額や短期金利の引き上げを示唆してしまったことで、市場はすでに減額や多少の短期金利上昇を織り込みつつある。当局者は6月に示唆した時点で、円安の勢いが弱まることを期待していたのかもしれないが、むしろ手の内を見せてしまったことで円安阻止の切り札が、一時的な円安抑制にしか効果がない為替介入以外に見当たらなくなっている。
また、これだけ手詰まりの中で、円売りを促している新NISA(少額投資非課税制度)の海外投資分の除外や、かつて噂されたレパトリ減税策など、円安の流れを抑制するような方針を政府は全く講じていない。そのため、円安を本腰を入れて止めようとしていないのではないかという憶測も徐々に出てきている。
円買いだけではなくドル売りが難しいのは、27日に行われた米大統領選挙を占う討論会で、トランプ前大統領がバイデン米政権の高インフレを非難したことも要因。CBSニュース/ユーガブの世論調査によると、民主党登録有権者のうち、バイデン氏が引き続き大統領選に出馬すべきだと答えたのはわずか55%となった。トランプ氏優勢の状況下で、インフレをさらに高める可能性のあるドル売りを本邦当局者が仕掛けるのは非常に難しい。
前回の介入後にイエレン米財務長官は、本邦の介入について幾度も「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」とくぎを刺していた。ドル買い・円売り介入と違い、米国にとっては自国通貨売りのドル売り介入には抵抗感がある。また、この数週間を通すと数円程度の動きで、4月29日のような前営業日から5円を超える動きでもなく、米国がドル売り介入に理解を示すのも難しいことも、ドル買い・円売り要因となる。
本日本邦から発表される経済指標では、6月調査の日銀・企業短期経済観測調査(短観)が発表される。かつては本邦の経済指標の中で最も注目されたものだが、ここ最近は短観で市場が動意づくのは難しい。ただし、参考のために企業が想定する2024年度の為替レートには目を配っておきたい。3月調査では全規模・全産業はドル円が141.42円、ユーロ円が151.86円、大規模・製造業はドル円が140.40円、ユーロ円が151.07円となった。
アジア時間では円中心の相場となるだろうが、早朝からユーロやランドが動意づいていることで、本日は様々な通貨の激しい振幅が予想される。フランスの第1回目の総選挙は予想通り極右政党「国民連合(RN)」が34%前後の最多得票を獲得した。欧州連合(EU)離脱の考えもある左派連合が第1党になる可能性が一先ず回避され、ユーロは早朝には堅調に推移している。また、南アでは国民統一政府(GNU)に野党第一党・民主同盟(DA)の参加合意が週末に決定し、ランドもオセアニア市場で強含んで始まった。アジア時間にトレンドを作ることは難しいかもしれないが、欧州入り後の値動きには要警戒となる。
(松井)
本日のドル円相場は、引き続き円安基調は変わらないか。先週28日には1986年12月以来となる161.27円を記録したドル円だが、依然として円を積極的に買う材料は不足している。
先週初までは160円台が「神田シーリング」などと、ドル円の上値の防戦ラインと囃し立てていた一部市場関係者もいたが、いざ160円台に乗せるとすでに160円台に目が慣れてきてしまっている。今後も緩やかな円安が進行した場合は、その流れを止める手段が乏しく、円の売り場を探している市場参加者がまだ多いだろう。先週のロンドンフィキシングを見ても分かるように、投機的な円売りだけではなく、実需の円売りが根強いのが現状だ。また、一部では先週取引されていた158円台まで円高が進めば、円売りを仕込みたいという声も出ているようだ。
円安の進行が止まらないのは、本邦通貨当局者が「為替の過度な変動は望ましくない」「最近の急速な円安進行に関しては深刻な懸念を有する」と円安懸念を表明しているものの、円安を止める手段が枯渇していることだ。6月の日銀政策決定会合で、今月(30-31日)の会合で長期国債の買い入れの減額や短期金利の引き上げを示唆してしまったことで、市場はすでに減額や多少の短期金利上昇を織り込みつつある。当局者は6月に示唆した時点で、円安の勢いが弱まることを期待していたのかもしれないが、むしろ手の内を見せてしまったことで円安阻止の切り札が、一時的な円安抑制にしか効果がない為替介入以外に見当たらなくなっている。
また、これだけ手詰まりの中で、円売りを促している新NISA(少額投資非課税制度)の海外投資分の除外や、かつて噂されたレパトリ減税策など、円安の流れを抑制するような方針を政府は全く講じていない。そのため、円安を本腰を入れて止めようとしていないのではないかという憶測も徐々に出てきている。
円買いだけではなくドル売りが難しいのは、27日に行われた米大統領選挙を占う討論会で、トランプ前大統領がバイデン米政権の高インフレを非難したことも要因。CBSニュース/ユーガブの世論調査によると、民主党登録有権者のうち、バイデン氏が引き続き大統領選に出馬すべきだと答えたのはわずか55%となった。トランプ氏優勢の状況下で、インフレをさらに高める可能性のあるドル売りを本邦当局者が仕掛けるのは非常に難しい。
前回の介入後にイエレン米財務長官は、本邦の介入について幾度も「為替介入は過剰な動きへの対処であるべき」とくぎを刺していた。ドル買い・円売り介入と違い、米国にとっては自国通貨売りのドル売り介入には抵抗感がある。また、この数週間を通すと数円程度の動きで、4月29日のような前営業日から5円を超える動きでもなく、米国がドル売り介入に理解を示すのも難しいことも、ドル買い・円売り要因となる。
本日本邦から発表される経済指標では、6月調査の日銀・企業短期経済観測調査(短観)が発表される。かつては本邦の経済指標の中で最も注目されたものだが、ここ最近は短観で市場が動意づくのは難しい。ただし、参考のために企業が想定する2024年度の為替レートには目を配っておきたい。3月調査では全規模・全産業はドル円が141.42円、ユーロ円が151.86円、大規模・製造業はドル円が140.40円、ユーロ円が151.07円となった。
アジア時間では円中心の相場となるだろうが、早朝からユーロやランドが動意づいていることで、本日は様々な通貨の激しい振幅が予想される。フランスの第1回目の総選挙は予想通り極右政党「国民連合(RN)」が34%前後の最多得票を獲得した。欧州連合(EU)離脱の考えもある左派連合が第1党になる可能性が一先ず回避され、ユーロは早朝には堅調に推移している。また、南アでは国民統一政府(GNU)に野党第一党・民主同盟(DA)の参加合意が週末に決定し、ランドもオセアニア市場で強含んで始まった。アジア時間にトレンドを作ることは難しいかもしれないが、欧州入り後の値動きには要警戒となる。
(松井)