東京為替見通し=米インフレ低下と地政学リスクでドル円上値重いか、RBNZに要注目

 昨日の海外市場でのドル円は、7月米卸売物価指数(PPI)が予想を下回ったことで米長期金利が低下し、一時146.60円と日通し安値を更新した。ユーロドルも一時1.1000ドルと5日以来の高値を付けた。

 本日のドル円は上値が重い展開となるか。本日は米国から注目度の高い7月消費者物価指数(CPI)が発表されることで、大きなリスクを取る地合いにはなりにくいだろう。しかし、昨日発表された米PPIがヘッドラインの前月比・前年比だけではなく、コア指数もすべて予想より下振れたことで上値が抑えられることになりそうだ。また、昨日はイスラム組織ハマスが、イスラエルのテルアビブとその郊外にロケット弾を撃ち込むなど、中東情勢が更に悪化していることで地政学リスクにより円が買われやすくなりそうだ。

 昨日の大幅上昇で日経平均株価は前週の下げをすべて回復したが、ドル円が同様に回復するというのは異なる。円が買われやすいのは日銀の金融政策だけではなく、上述のように米インフレの低下やリスク回避の動き、また対円だけではなく対アジア通貨でのドル売りが進んでいることも一因。昨日時点で今月に入り3%超上昇しているマレーシア・リンギを筆頭に、インドネシア・ルピアやフィリピン・ペソも2.5%程度対ドルで強含んでいる。本日も米金利の低下で株価の上昇が期待されているものの、ドル円が昨日のように一方的に上昇することを期待するのは難しいだろう。

 なお、先週はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では一時8割を超えて、米連邦公開市場委員会(FOMC)での50ベーシスポイント(bp)の利下げ予想となったものが、昨日のPPI発表前は25bpと50bpの利下げ予想が半々になった。PPI発表後は50bpの利下げがやや優勢となったものの、多少の振れ程度しか変化はないことで、本日のCPIの結果が重要となる。

 円相場は方向感をつかみにくいだろうが、本日はNZ準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表することで、NZドルが大相場になる可能性が高い。2週間前までは政策金利の据え置き予想が優勢だった。しかし、RBNZが8日に発表した期待インフレは2年後を2.33%から2.03%まで、1年先を2.73%から2.40%まで引き下げたことで、利下げ予想が徐々に増えてきている。予想が拮抗するなかで、RBNZの動向を見極めることになるが、政策金利の結果と今回は四半期に一度発表される声明文(MPS)も発表されることで、市場の注目度は高い。



(松井)
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