東京為替見通し=FRB議長証言後もドル売り勢い弱く円安継続か、RBNZは無風予想

 昨日の海外市場でのドル円は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言では、これまでの発言と大きな違いはなかったが、米金利の上昇とともにドル買いで反応し、161.52円まで上昇した。ユーロドルは1.0806ドルまで弱含んだ。

 本日の東京市場では円安地合いは変わらないか。先週後半から本邦実需勢や調整の円買い・ドル売りが入っているが、ドル円の下押しが徐々に浅くなってきている。また、昨日のパウエルFRB議長の議会証言後、米国の報道は、CNBCが「高金利の長期維持は経済成長を危うくする(Fed Chair Powell says holding rates high for too long could jeopardize economic growth)」、WSJは「FRBが利下げに近づく(Powell Inches the Fed Closer to Cutting Rates)」と、どれもハト派よりの見解を報じた。しかしながら、米債市場は金利低下とはならず、同様にドル売りの反応も限られた。CMEグループの「フェドウォッチ」では年末までには2回の利下げを97%前後まで織り込んでいることもあり、市場には新味のない内容となったのかもしれないが、いずれにしろ、ドル売りの反応が鈍かった。この流れを受け継いだ本日のアジア市場では、積極的にドル売りに動くのは難しいと予想する。

 本日は、本邦では注目すべき点が2点ある。1点目は昨日から日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を集めて行っている「債券市場参加者会合」。通算で20回目となる同会合だが、臨時開催が初めてとなっただけではなく、植田日銀総裁が「国債買い入れ減額、市場参加者の意見も聞いて丁寧に進めたい」と発言していたことで注目度が増した。
 昨日は銀行等グループと証券等グループが分かれて行われたが、本日は16時30分からバイサイドグループが参加して行われる。昨日の会合後に伝わった内容では、幅広い意見が出たとは言われているが、基本路線は国債の買い入れ減額のペースと幅に関する意見が多く、すでに減額は決定しているような動きになっている。というのも、参加している銀行をはじめとする金融機関は利上げに傾けば収益増加効果が大きいことで、国債買い入れの大幅減額を積極的に意見としてあげるのは当然と言えよう。
 昨日の会合を前にして、鈴木財務相は、この会合について「重要な協議で注視したい」と発言するなど、今回の会合が日銀の金融政策決定会合にも影響を与える(与えさせようとしている)可能性も指摘されている。これは、ここ最近のさえない経済指標の結果もあり、日銀の中では大幅減額には抵抗感があるとのうわさもあるが、財務省や政府が、この「債券市場参加者会合」での声を免罪符にして、国民や中小企業には不満が出やすい利上げ路線の道を探ろうとしているのかもしれない。なお、前回19回目の会合が開かれたのが、6月4-5日だったが、議事要旨の公表は同月27日となっている。よって、今回9-10日の議事要旨は、7月30-31日の日銀政策決定会合後に公表されることが濃厚だ。
 
 2点目は本邦の6月の国内企業物価指数に注目したい。前月比では前回の+0.7%から+0.4%まで低下するとの予想だが、前年比では円安の影響もあり+2.4%から+2.9%まで上昇する予想になっている。市場では国債買い入れ減額を織り込もうとしていることで、物価指数が予想より高まるかに注目したい。

 円以外の通貨では、NZドルの動きに注目。本日は日本時間11時にニュージーランド準備銀行(RBNZ)の金融政策委員会(MPC)が政策金利を発表する。市場では、政策金利は5.50%の据え置き予想となっている。前回5月22日のMPCで発表された金融政策声明(statement)とは違い、本日はより簡潔な金融政策レビュー(review)しか発表されないことで、今後の政策金利見通しなどは公開されない。僅か1ページ程度のレビューの発表となることで、前回ほどRBNZの方針を読み解くのは難しいが、サプライズがないとは限らないことで警戒は怠らないようにしておきたい。また、中国からは6月の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)が発表される。

(松井)
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