東京為替見通し=ドル円、米雇用年次改定100万人下方修正への警戒感から軟調推移か

 20日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧米株相場の下落や米10年債利回りが3.80%台まで低下したことで145.20円まで値を下げた。ユーロドルは米長期金利の低下に伴うユーロ買い・ドル売りで1.1130ドルと年初来高値を更新した。ユーロ円は欧米株価の下落に伴うリスク・オフの円買いで161.54円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の7月貿易収支を見極めた後は、今夜発表される米雇用年次ベンチマーク改定への警戒感から軟調推移が予想される。

 8時50分に発表される日本の7月の貿易収支は3300億円程度の赤字と予想されている。
 1-6月の貿易赤字は約3.2兆円だったことで、7月が予想通りならば、3.53兆円程度の赤字となる。また、投資信託を通じた家計の円売り(新NISA少額投資非課税制度)は1-7月で7兆8695億円だったことで、1-7月の本邦からの実需の円売りは約11.4兆円となる。
 本邦通貨当局は、今年、15兆3233億円のドル売り・円買い介入を実施したことで、貿易赤字と家計の円売りを上回り、投機筋は円・キャリートレードの手仕舞いに動いている模様で、ドル円は需給面から161円台から141円台まで20円幅下落したことになる。

 今夜23時に米労働省が発表する年次ベンチマーク改定での2024年3月分までの1年間の雇用者数は、大幅に下方修正される可能性(予想:▲30万人~▲100万人)が警戒されている。ちなみに、昨年8月は、50万人程度の下方修正が警戒されていたが、実際は30.6万人の下方修正だった。

 2023年4月から2024年3月までの非農業部門就労者数は290万人の増加、月平均は24.1万人の増加だが、50万人程度下方修正された場合、月平均で20万人を割り込むことになる。
 もし警戒されているように大幅な下方修正(▲100万人)だった場合、23日(日本時間午後11時)のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でのパウエルFRB議長の講演が、7月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見以上にハト派になる可能性、例えば9月FOMCでの0.50%の利下げ開始に言及する可能性が高まることになる。

 FOMCは、2022年3月の利上げ開始以来、2大責務(「雇用の最大化」と「物価の安定」)のうち、「物価の安定」に特段の重点を置き、FF金利誘導目標を0.00-25%から5.25-50%まで引き上げてきた。しかし、7月の声明文では、「2大責務の『両面』のリスクに留意する」との文言に変更され、雇用情勢に配慮するスタンスが示された。
 7月の失業率が4.3%まで上昇し、FRBが完全雇用と見なす4.2%をわずかに上回っていることで、パウエルFRB議長は2020年8月のジャクソンホール会合での見解、すなわち、FRBの金融政策の主軸を「物価安定」から「雇用最大化」へ大転換することを再表明する可能性が警戒されている。



(山下)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。