東京為替見通し=ドル円、米金利低下で上値が重い展開 豪ドルはRBA議事要旨に注目

 19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、欧米株相場の上昇を背景に東京市場の安値145.19円から146.71円付近まで反発。しかしながら、予想を下回る米経済指標や米金利低下により戻りは限定的だった。ユーロドルは欧米株価の上昇や7月米景気先行指標総合指数が予想を下回ったことで1.1086ドルまで上昇した。ユーロ円は東京市場の安値160.42円から162.58円付近まで戻した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米長期金利の低下や昨日のドル売り・円買いの要因だった米雇用年次ベンチマーク改定予想や日本企業に対する大型買収案件への警戒感から上値が重い展開が予想される。

 今週のメインイベントは、23日に予定されている植田日銀総裁の衆議院財務金融委員会での閉会中審査における利上げに関する意見聴取と、ジャクソンホール会合でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演だろう。両者は、7月31日の日銀金融政策決定会合の後と米連邦公開市場委員会(FOMC)の後の記者会見でドル売り・円買いの流れに拍車をかけており、23日も同様の見解ならばドル売り・円買い再開が警戒されている。

 昨日の米系ヘッジファンド筋によるドル売り仕掛けの背景として、明日米労働省が発表する年次ベンチマーク改定での2024年3月分までの1年間の雇用者数が、大幅に下方修正される可能性が指摘されていた。ちなみに、昨年8月は、50万人程度の下方修正が警戒されていたが、実際は30.6万人の下方修正だった。

 雇用統計の事業所調査は、非農業部門(Non Farm)約11.9万社の給与明細(Payroll)で集計されるが、新たに生まれた企業による新規雇用と事業閉鎖に伴う雇用者減少は反映されない面がある。そこで労働省は、事業者調査に基づく雇用者増加数に、新たに生まれた企業による新規雇用者増加数と事業閉鎖に伴う雇用者減少数を暫定的に推計して、過去5年間の移動平均線と比較する「Birth-Death model(起業・廃業モデル)」で調整している。

 しかし、米労働省は、「起業・廃業モデル」が正確ではないことを認めており、ウォールストリート・ジャーナル紙は、昨年7月の記事で、「起業・廃業モデル」により「NFPは労働市場を過大評価している可能性」を取り上げていた。

 2023年4月から2024年3月までの非農業部門就労者数の月平均は24.1万人の増加だが、50万人程度下方修正された場合、月平均で20万人を割り込むことになる。すなわち、23日のジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演で、9月FOMCでの利下げ幅が0.50%程度と言及する可能性が高まることになる。

 もう一つの円買い材料としては、カナダ企業による日本企業に対する5兆円規模の買収案件が取り沙汰されており、今後の注目材料となる。7月11-12日の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入(5兆5348億円)に匹敵する額であり、関連ヘッドラインには警戒しておきたい。

 10時30分に公表される8月5-6日に開催された豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨がタカ派寄りの内容だった場合は豪ドル買いにつながることで警戒しておきたい。声明文では「労働市場は依然としてひっ迫している」との見解が示されており、7月の雇用統計でも常勤雇用者数を中心に新規雇用者数が予想を大幅に上回っていた。

(山下)
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