東京為替見通し=本邦実質GDPの大幅下方修正も円安要因、RBA議事要旨に注目

 昨日のNY市場でのドル円は、米長期金利の指標となる米10年債利回りが4.49%台まで上昇すると円売り・ドル買いが優勢となった。6月米ISM製造業景況指数が予想を下回ったことが伝わると一時161.01円付近まで下押ししたものの、反応は限定的。ユーロドルは、欧州序盤には一時1.0776ドルまで値を上げたが、ロンドン・フィキシングに絡んだドル買いのフローが観測されると1.0720ドル付近まで下押しした。
 
 本日の東京市場でも円安地合いが維持されるか。先月末のロンドン・フィキシングや昨日の動向を見ていても分かるように、現行の円売りは「投機」よりも「実需」の円売りが主要因になっている。

 昨日は日銀短観で大企業製造業業況判断が市場予想を上回ったこともあり、本邦長期金利が上昇したにもかかわらず、大きく円買いには結びつかなかった。すでに、今月(30-31日)の日銀政策決定会合で長期国債の買い入れの減額や短期金利の引き上げを示唆してしまったことで、円安を止める手段も更になくなるなど手詰まり状態だ。

 市場は、次の日銀会合である程度の政策変更手段は織り込みつつある。しかしながら、昨日内閣府が公表した1-3月期の実質国内総生産(GDP)が改定値から大幅に下方修正したことで、大きく政策変更もできないとの声が出てきたことも円安要因。実質GDPは建設統計のミスとの理由で、前期比で改定値の-0.5%から-0.7%。前年比で-1.8%から-2.9%へと大幅に修正されている。

 もっとも、円安が続いていることもあり、円買い介入を警戒する声は徐々に高まってきている。本日の日経新聞でも円安時の介入条件について記載されるなど、介入に対する注目度が増している。しかし一部からは、円安の流れを止められないことで紙上での口先介入により円安を緩やかにしようとしているのではないかとの見方もある。

 また円買い介入は、通常はドル売りを意味することでもあり、前回の介入後にイエレン米財務長官が「介入はまれであり、協議が行われると予想される(we would expect these interventions to be rare and consultation to take place)」とドル売りに対して拒絶反応を示している中で、ドル売り介入へのハードルは高い。

 ドル円以外では、豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨が公表されることで、豪ドルの動きに要注目。声明文では前回と比較しても市場を動意づけるようなものは発表されなかったが、理事会直後のブロックRBA総裁の会見では「今回の会合で利上げを議論した」と述べたことで、豪ドルは強含んだ。先週発表された豪州の月次CPIは、前年比で市場予想の3.8%を上回る4.0%までインフレが高進したのを確認したため、CPI発表前の理事会で市場の想定よりもタカ派の内容だった場合は豪ドルが強含みそうだ。なお、今月はRBAの理事会は行われず、次回の理事会は8月5-6日の予定。
 
 また、本日はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が欧州中央銀行(ECB)フォーラーム(ポルトガル・シントラ)でラガルドECB総裁とともにパネルディスカッションを行う予定。欧州入り後に相場が急転するリスクも考慮しておきたい。

(松井)
株式会社DZHフィナンシャルリサーチより提供している情報(以下「情報」といいます。)は、 情報提供を目的とするものであり、特定通貨の売買や、投資判断ならびに外国為替証拠金取引その他金融商品の投資勧誘を目的としたものではありません。 投資に関する最終決定はあくまでお客様ご自身の判断と責任において行ってください。情報の内容につきましては、弊社が正確性、確実性を保証するものではありません。 また、予告なしに内容を変更することがありますのでご注意ください。 商用目的で情報の内容を第三者へ提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容によって生じた如何なる損害についても、弊社は一切の責任を負いません。