東京為替見通し=ドル円、軟調推移か 11月FOMCでの0.50%利下げ確率が上昇

 12日のニューヨーク外国為替市場でドル円は141.73円まで値を下げた。8月米卸売物価指数(PPI)が総合・コアともに前年比で予想を下回ったことが重しとなり、米10年債利回りの低下に引きずられた。ユーロドルは1.1075ドルまで上昇。欧州中央銀行(ECB)が予想通りに政策金利を引き下げたものの、10月の追加利下げ観測が後退したことに後押しされた

 本日の東京外国為替市場のドル円は、フェドウオッチで11月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%利下げ確率が上昇していることで下値を探る展開が予想される。

 来週17-18日のFOMCに向けて、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、0.25%の利下げ開始がほぼ確実になっている。さらに11月FOMCについては、前日は0.25%の利下げ確率が高かったものの現状は0.50%の利下げ確率が高くなっており、ドル売りの背景となっている。

 ドル円は11日に年初来安値140.71円まで下落して、昨年12月28日の安値140.25円に迫り、7月3日の高値161.95円までの上昇トレンドの全値押しを達成した後、下影を残して143.04円まで反発した。テクニカル分析的には、140円への下押しは売られ過ぎを示唆するパターンだったものの、攻防の分岐点である一目均衡表・転換線143.96円が上値を抑えたことで、下値リスクへの警戒感が高まりつつある。

 昨日は、日銀金融政策決定会合の構成メンバーの中で最もタカ派と見なされている田村日銀審議委員が「経済・物価情勢が見通し通りに推移すれば、政策金利である短期金利を2026年度までの見通し期間後半にかけて、少なくとも1%程度まで引き上げておくことが適切だ」との認識を示した。中立金利の推計には幅があるが、田村氏は「最低でも1%程度だろう」との見方を示したものの、「中立金利1%は仮置きと位置づけ」とも述べていた。

 4月展望リポートで日銀は、中立金利導出の前提となる日本の自然利子率について「マイナス1.0~プラス0.5%」の範囲と示していた。もし、このレンジの下限マイナス1%に物価目標2%を足すと、中立金利の下限は1%になる。

 植田日銀総裁は7月31日の日銀会合の後の記者会見で、ターミナルレート(利上げの最終到達点)に関して、過去の利上げ局面において上限となった「0.5%の壁」も「特に意識していない」と語った。そして、中立金利自体に大幅な不確実性があるが、しばらくはその不確実な領域に入ることはないとの認識を示しており、中立金利の下限である1.0%程度が上限であることを示唆していた。

 日銀の利上げ路線の射程が1%程度、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ幅が年内1%程度との前提では、ドル円は下値を探る展開がメインシナリオとならざるを得ないのかもしれない。

(山下)
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