東京為替見通し=ドル円、植田日銀総裁の12月会合に向けた発言に要警戒か

 15日のニューヨーク外国為替市場でドル円は153.86円まで下落した。米長期金利が低下に転じ、ダウ平均が一時400ドル超下落し、ナイト・セッションの日経平均先物も売り込まれたことに影響された。ユーロドルは1.0593ドルまで上昇後に1.0516ドルまで反落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁の発言で12月18-19日の日銀金融政策決定会合での追加利上げ、あるいは据え置きの可能性を見極める展開となる。同総裁は本日、10時5分から名古屋市での金融経済懇談会で講演をし、午後からは記者会見が予定されている。

 植田総裁は10月の日銀会合の後、追加利上げまでの「時間的余裕」を使わないと述べた。また、利上げの障害とされてきた「市場の混乱」が鎮静化してきており、次回会合で追加利上げに踏み切る可能性が高まりつつある。本日は12月引き締め観測に前向きな発言となるのか、それとも先週のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のように前言を翻すサプライズとなるのか注目しておきたい。

 パウエルFRB議長は先週「現在、われわれが目にしている経済の強さにより、慎重な決定を行うことが可能になっている」と述べ、「経済はFRBが利下げを急ぐ必要性を示唆せず」と言及。これを受けて、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げ観測が後退している。金利スワップ市場が織り込む利下げ確率は約80%程度から約50%に低下した。

 ドル円は、トランプ・トレード(米国債売り・ドル買い)を背景に、先週末に156.75円まで上昇した。神田前財務官による今年の4回の覆面介入の水準(157円台から161円台)に迫ってきた。植田日銀総裁が12月会合での据え置きを示唆した場合、ドル円は反発することが見込まれるが、その場合は本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒しておきたい。

 なお先週14日、米財務省が公表したバイデン政権下で最後となる半期に一度の「外国為替報告書」では、日本による4月以降の円買いドル売り介入に対して「日本は為替介入について透明性を保っている」などと言及して一定の理解が示された。一方で、「介入は極めて例外的状況のみに限定され、適切な事前協議が行われるべきだ」とも釘を刺していた。

 また、現在は財務省顧問も務める神田内閣官房参与は先日、株高とドル高・円安の「トランプ・トレード」が起きている背景として、財政赤字増大による米金利上昇や関税の引き上げ、移民制限によるインフレと金利引き上げの可能性といった憶測があると指摘。投機が変動を助長しているとして、「行き過ぎた動きには適切な対応を取る」と円買い介入の可能性を示唆していた。

 第2次トランプ米政権は、米国の製造業を保護するため、輸入関税を引き上げ、ドル安を志向すると思われることから、本邦通貨当局の円買い介入と整合的であるため警戒しておきたい。

 参考までに、2016年12月のトランプ・ラリーの高値は118.66円だったが、第1次トランプ米政権(2017~2020年)の期間中に上回ることはなかった。

(山下)
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