週間為替展望(豪ドル/ZAR)-豪ドル、関税以外の報復措置に警戒

◆豪ドル、米中の関税引上げは落ち着くも別種の報復措置に警戒
◆豪ドル、来月の選挙を前に与野党間の攻防に注目
◆ZAR、中国との更なる通商拡大が今後の焦点に

予想レンジ
豪ドル円 86.00-92.00円
南ア・ランド円 7.00-7.80円

4月21日週の展望
 豪ドルはリスク許容度に敏感であり、来週も関税に関する報道で上下を繰り返すことになる。トランプ米政権による関税引き上げ後、多くの国の通貨は米国のリセッション懸念の高まりでドル売りが進行した。ただ、豪ドルはリスク回避の動きで上値が重いほか、中国との通商面での関係性が深く、米中両国の景気低迷懸念が重しとなっている。一方的なドル売りにはなりにくい。

 米中間の関税は、米国が対中を145%、中国が対米を125%に引き上げたが、中国は米国が再度関税を引き上げても対抗しないことを示唆した。しかし、今週、中国政府は国内航空会社に「ボーイング機の受取り停止」を指示したように、別の報復措置を講じ始めている。来週も関税以外にも、対象品目などの遷移があれば豪ドルを動意づけることになるだろう。

 豪州国内では、5月3日に迫る総選挙に関する報道にも注目。直近の市場調査では与党労働党が辛うじて過半数を獲得する見通し。ただ、豪州もインフレ懸念の高まりや、政権の対米姿勢を「弱腰」と野党・保守党は批判している。米政権の動向次第では情勢が変わる可能性もあることで注意が必要だ。なお、来週、豪州からは主だった経済指標の発表は予定されていない。

 南アフリカ・ランド(ZAR)は上値が限定的となりそうだ。今週に入りアフリカ民族会議(ANC)が付加価値税(VAT)の引き上げを断念したとの一部報道が流れ、民主同盟(DA)の国民統一政府(GNU)離脱が回避されるという期待感からZARが買い戻される場面もあった。ただ、VAT引き上げの撤回はまだ正式には決定されておらず、来週もVATをめぐる政治的な動向から目が離せない。

 国外要因では、引き続き米政権による関税が注目される。南アと米国の関係が改善される可能性は極めて低く、90日間の延期解除後は南アへの30%の上乗せ関税が科されることになりそうな状況に変わりはない。そのため、南アはこの数週間、更に親中路線を明確に示している。先週11日には、貿易産業相が中国の商務相とオンライン会談を行い、両国間で経済と貿易の協力関係を強めた。

 また、今週は「一つの中国」政策にコミットするため、南アは台湾に対し、連絡事務所を行政の首都プレトリアからヨハネスブルクに移転するよう伝えた。対米よりも対中の貿易拡大の道筋が見えた場合にはZARの支えになりそうだ。

 なお、来週の経済指標では、23日に3月CPI、24日には3月PPIが発表される予定。

4月14日週の回顧
 豪ドルはほぼ横ばい。米国のリセッション懸念でドル売りが豪ドルを支えるものの、米中の関税合戦でリスク回避の動きが豪ドルの抑えになった。対ドル、対円とも神経質に動いたが値幅は限られた。なお、豪準備銀行(RBA)議事録は再利下げを示唆する内容だったが、金利市場ではすでに5月の利下げをほぼ織り込んでおり、豪ドルの反応は限られた。ZARは小高い動き。VAT引き上げが中止されるとの一部報道が流れると買い圧力が強まる場面があった。しかし、中国のボーイング機受取停止指示などを受けて株式市場が軟調に動くと上値を抑えた。(了)
(執筆:4月18日、9:50)

(越後)
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