東京為替見通し=ドル円、明日からの米中通商交渉への期待感から堅調推移か

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米英貿易協定の締結合意や週末に予定されている米中通商交渉への期待感、トランプ大統領の発言「今すぐ株を買った方がいい」などを受けて146.18円まで上昇した。ユーロドルは米英貿易協定の締結や米長期金利の大幅上昇を受けて1.1212ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、3月の実質賃金を見極めた後は、今週末に開催される米中通商交渉への期待感から堅調推移が予想される。

 トランプ米大統領が英国との貿易協定合意を発表し、対中関税が引き下げられる可能性にも言及したことで、10-11日に開催される米中通商交渉への期待感が高まっている。

 ニューヨーク市場のドル円は146.18円まで上昇したが、IMMシカゴ筋の過去最大規模の円のネット買い持ちポジションが手仕舞われるタイミングに警戒しておきたい。

 IMMシカゴ筋は、今年1月にドル円が155円付近で推移していた頃、円の売り持ちポジションから買い持ちポジションに転換し、152円付近では過去最大規模に拡大して、先週4月29日時点(※NY終値:142.33円)では179,212枚まで過去最大を更新していた。

 シカゴ筋がドル売り・円買いのポジションに傾いた背景には、日銀の追加利上げ観測、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測、米国の貿易赤字削減に向けたトランプ関税によるドル下落観測などがあったと思われる。

 しかし、日銀金融政策決定会合では、トランプ関税の「不確実性」を理由にハト派的な据え置きとなり、米連邦公開市場委員会(FOMC)でも「不確実性」を理由に、タカ派的な据え置きとなっており、米英貿易協定の締結合意や米中通商交渉への期待感などから、ドル売り・円買いのベクトルが後退しつつある。

 米中通商交渉では、ベッセント米財務長官の発言「今回は大きな貿易合意についてではなく、緊張緩和に関するものになるだろう。前進する前に緊張を緩和しなければならない」のように米中間の緊張が緩和される内容だった場合は、来週のドル円は、雲の下限147.91円や200日移動平均線149.68円に向けた上昇基調が予想される。
 逆に、米中間の緊張が緩和されなければ、ドル円は失速することになる。

 8時30分に発表される3月毎月勤労統計(現金給与総額)では、実質賃金に注目することになる。2月の現金給与総額は、前の年の同じ月と比べて3.1%増えたものの、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は1.2%減少し、2カ月連続のマイナスだった。

 日銀は1日の金融政策決定会合で現状の金融政策の維持を決定し、トランプ関税によって世界経済の不確実性が一段の増す中で、経済・物価見通しを下方修正するとともに、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りした。そして、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中核である基本的見解から、日銀の利上げ路線の根幹を成してきた「賃金と物価の好循環」という文言が消滅した。
 3月の実質賃金が3カ月連続のマイナスだった場合は、日銀のハト派的な据え置きを裏付けることになる。


(山下)
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