週間為替展望(ドル/ユーロ)-米関税巡る各国との交渉に注目

◆ドル円、米利下げ観測後退で下値堅いも米関税政策の行方に引き続き注目
◆ドル円、米CPIなど重要指標が発表予定
◆ユーロドル、欧米関税政策の行方に警戒

予想レンジ
ドル円   143.00-148.50円
ユーロドル 1.0900-1.1400ドル

5月12日週の展望
 ドル円は、6-7日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「利下げを急いでいない」姿勢を示したことを受けて早期利下げ観測が後退。ドルはしばらく底堅く推移しそうだ。米関税政策を巡る不確実性が拭えない限り利下げを見送る格好となったが、これに対してトランプ米大統領が圧力を掛けてくるかどうかが警戒される。米大統領がFRB議長解任を否定したため、中銀の独立性は保たれたが、二転三転する米大統領の発言に引き続き振り回されることになるだろう。

 また、米国と各国との通商交渉の行方にも注目だ。週末の10-11日にはスイスに訪問中の何立峰・中国副首相とベッセント米財務長官が会談を行うことになっており、米中交渉の進展期待が高まっている。ただ、中国側は「いかなる協議も相互尊重の下、対等で互恵的な前提で実施されなくてはならない」と一貫した態度を示しており、米国が誠意を示したうえで中国側と向き合うことが必要であることを訴えている。トランプ米大統領は「交渉がうまくいけば、対中関税を引き下げる可能性」と柔軟な姿勢を示してはいるが、楽観視することは出来ない。

 米国の経済指標としては、13日に4月消費者物価指数(CPI)、15日に4月卸売物価指数(PPI)や4月小売売上高、5月NY連銀およびフィラデルフィア連銀製造業景気指数、16日に5月ミシガン大消費者態度指数・速報値など、重要指標が多く発表される。

 ユーロドルは、欧州連合(EU)と米国との関税交渉の行方次第となりそうだ。英国が一足先に米国との貿易合意に至ったが、もともと厳しい関税を課していない英国との交渉は容易であった一方、対米輸出品のうち現時点で関税の対象が70%を占めるEUは交渉が難航している。なお、EUは8日、航空機や自動車、バーボンなどを対象に950億ユーロ規模の対米関税リストを公表。米政権との貿易交渉に失敗した場合に発動される。

5月5日週の回顧
 ドル円は底堅い動きとなった。米関税政策に対する先行き不透明感を背景に週明けから売られる展開となった。米国株安や米長期金利の低下とともに一時142.36円まで売り込まれた。ただ、米中交渉に関する報道が伝わると反発。FOMC後にパウエルFRB議長がタカ派的発言を繰返したほか、米英貿易協定合意で買いが加速すると146.18円まで買い上げられた。

 ユーロドルは上値の重い展開。良好な米ISM非製造業指数を受けて週明けは売りが強まり、一時1.1280ドルまで値を下げた。独首相にメルツ氏が選出されたことが伝わると1.1381ドルまで反発したが、その後はドル全面高となるなか1.1212ドルまで再び値を下げている。(了)


(執筆:5月9日、9:00)
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