東京為替見通し=ドル円 上値は重いか、訪台有無・FRB要人講演控え値動きは限定的に

 海外市場でドル円は、米10年債利回りが一時2.5714%前後と4月7日以来約4カ月ぶりの低水準を記録。全般ドル売りが優勢となり、一時131.60円と6月16日以来約1カ月半ぶりの安値を付けた。ユーロドルは、一時1.0275ドルと7月21日以来の高値を付けた。

 本日の東京時間のドル円は、上値は重いままか。先週末発表された米個人消費支出(PCE)デフレーター、昨日発表された7月米ISM製造業景気指数と、立て続けに強い指標結果が出るとドル買いに動く場面もあったが上昇幅は限られた。日米金融政策の方向性の違いは依然として大きな隔たりがあり、一方的な円買いがここから進むのも難しいだろうが、重要指標でもドル買いの反応が限られたことを考えると、当面は円売りトレンドに戻るのも難しいか。

 もっとも、東京時間以後にドル円を動意づかせる注目点2つが控えており、東京時間での値動きは狭められるかもしれない。

 1点目はペロシ米下院議長の台湾訪問が行われるか否か。米民主党に関する報道に強いCNNをはじめ、多くのメディアでは到着時間は不明だが「訪台の予定」と報じている。ブリンケン米国務長官は、ペロシ氏が訪問するかどうかは本人の決定であるという政権の見解を繰り返し、「ペロシ下院議長が何をしようとしているのかは分からない」と付け加えた。訪台となれば米中関係が悪化し、7月に大幅上昇した米株の流れに水が差され、一時的にはリスク回避の円買いとなるだろう(もっとも今後、アジア政局不安が続けば円売りの側面も出てくる可能性もある)。
 逆に訪台を避けた場合は米株の支えとはなるが、米民主党政権が弱腰とみられることで、今後のバイデン政権に対する評価が更に低下する可能性もありそうだ。

 2点目は、本日から米連邦準備理事会(FRB)要人の講演やイベントが欧米入り後から重なることだ。本日はエバンズ米シカゴ連銀総裁、メスター米クリーブランド連銀総裁が講演予定。米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエルFRB議長の会見以後、初めてFRB関係者が公けの場で発言することになる。パウエル議長は利上げに慎重な姿勢を示したが、他の金融当局者も同様の見解を持っているか否かに要注目。

 特にメスター氏は今年のFOMC投票メンバーでもあり注目度が高い。しかも、今回の議題が「経済とインフレ」についてで、「FRBのインフレ抑制計画とリセッションを招きかねない懸念(the Fed's plan to tamp down on inflation and the concerns that it could induce a recession)」について話し合われるとされている。議題内容から見て、金融政策について言及せざるを得ないだろう。なお、メスター氏は先月のブラックアウト期間に入る直前「インフレがピークに達したという説得力のある兆候はない」と、パウエルFRB議長とは違った見解を示した。

 ドル円の値動きは上述のように限られる可能性もあるが、東京時間では豪ドルに要注目。日本時間の13時半に豪準備銀行(RBA)理事会が政策金利を発表する。先週発表された4-6月期消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回ったが、前年比で+6.1%と21年ぶりの高い伸びとなった。また、RBAが重要視するトリム平均値は市場予想を上回る4.9%の上昇だった。まちまちな結果だったが、市場では50ベーシスポイント(bp)の利上げが優勢となり、75bpの利上げを予想する声は減少している。CPIが発表されたすぐ後の14時半からブラックアウト期間に入っており、RBA関係者のCPIに関するコメントなどが伝わっておらず、利上げ幅が予想通りだった場合でも、声明文の内容次第で豪ドルは大きく動きそうだ。

(松井)
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