東京為替見通し=ドル円堅調推移も、7月米CPI控えて上値は限定的か

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、7月非農業部門雇用者数が前月比52.8万人増、失業率が3.5%だったことで135.50円まで上昇した。ユーロドルは1.0142ドルまで下落した。ユーロ円は137.76円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、米国7月の雇用統計を受けて底堅い展開が予想されるものの、10日発表の米7月消費者物価指数(CPI)控えて上値は限定的か。

 米国7月の失業率が3.5%、非農業部門雇用者数が前月比+52.8万人だったことで、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月20-21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%の利上げ確率が70.5%まで上昇し、0.50%の利上げ確率は29.5%まで低下している。
 パウエルFRB議長は7月27日の会見で、具体的なフォワードガイダンスは示さずに、「今後の利上げについてはデータ次第であり、会合ごとに判断される」と説明した。7月の雇用統計は0.75%の利上げを正当化しており、次の重要指標は7月のCPIとなる。

 10日に発表される米国7月のCPIは、原油価格が伸び悩んでいることで前年比+8.8%と予想されており、6月の前年比+9.1%からの鈍化が見込まれている。予想通りならば、「インフレピーク説」が台頭することで、0.75%の利上げ確率が低下し、9%以上の上昇率となれば、0.75%の利上げ確率がさらに上昇することになる。また、インフレ率が著しく上昇していた場合は、9月20-21日のFOMCを待たずに、今月緊急FOMCが開催されて緊急利上げの可能性が高まることになる。

 ドル円の上値を抑える要因としては、米国の国内総生産(GDP)が2四半期連続してマイナス成長を記録していることで「テクニカル・リセッション」に陥っていること、原油価格がやや低迷していること、台湾を巡る地政学リスクへの警戒感が高まっていることなどが挙げられる。
 ペロシ米下院議長が11月の中間選挙での劣勢を挽回するため台湾訪問を強行したことで、今秋の第20回中国共産党大会で、異例の「3期目続投」を目論んでいる習中国国家主席も対抗措置を打ち出さざるを得ない状況となりつつある。
 中国側は、台湾周辺での軍事訓練を活発化させ、ペロシ米下院議長に対する制裁や米軍幹部との対話中止など8項目の措置を打ち出した。
 米国側も、検討されていた対中制裁関税撤廃を白紙に戻すなどの対抗措置が示唆されている。
 米国の著名作家トム・クランシー氏の著作は、将来の事件を予見していると言われている。『米露開戦』(2013年)では、ヴォローディン露大統領が、大ロシア帝国の復活を夢見ており、突破口としてウクライナに侵攻したが、現実には、プーチン露大統領が2014年にクリミア半島、2022年にウクライナに侵攻している。『米中開戦』(2012年)では、中国による南シナ海の一方的封鎖が米中開戦の引き金になった。


(山下)
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