東京為替見通し=バイデン米大統領の一般教書演説や日米10年債利回りの動向に要注目

 7日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、パウエルFRB議長が「ディスインフレのプロセスが始まった。2023年はインフレが大幅に鈍化する年になる見通し」と述べ、米10年債利回りが3.59%台まで低下したことで130.48円まで下落した。その後、パウエルFRB議長が「好調な労働市場や高インフレ示すデータが続けば、織り込み済み以上の利上げが必要になる可能性がある」と述べ、米10年債利回りが3.68%台まで反発したことで131.48円付近まで下げ渋った。ユーロドルは1.0669ドルまで下落後に1.0766ドルまで反発したが、パウエル議長が労働市場のデータ次第ではピーク金利がさらに上昇する可能性を示唆すると、1.0688ドル付近まで押し戻された。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、11時から予定されているバイデン米大統領の一般教書演説を聞きながら、日米10年債利回りの動向に連れた展開が予想される。

 昨日のドル円は、東京市場では12月の名目賃金の上昇が円買い要因となり、ニューヨーク市場ではパウエルFRB議長のディスインフレへの言及がドル売り要因となったことで、月曜日に空けた窓(131.20円-131.52円)を埋めて、130.48円まで下落した。

 パウエルFRB議長は、「ディスインフレのプロセスが始まった。2023年はインフレが大幅に鈍化する年になる見通し」というハト派発言、「好調な労働市場や高インフレ示すデータが続けば、織り込み済み以上の利上げが必要になる可能性がある」というタカ派発言を織り交ぜており、市場を混乱させている。
 来週発表される米国1月の消費者物価指数(CPI)で米国のインフレ動向を見極めて、ドルの方向性を確認することになるのかもしれない。

 日本の昨年12月の名目賃金(現金給与額)が前年同月比+4.8%増加し、物価変動の影響(▲4.8%)を除いた実質賃金はボーナスの増加幅拡大の影響で+0.1%と9カ月ぶりにプラスに転じたことで円買いが優勢となった。すなわち、黒田日銀総裁が利上げの条件としている「賃金上昇を伴う物価上昇」にやや近づいたことで、円買い要因となった。

 本日8時50分に発表される日本の12月国際収支では、12月の貿易赤字が減少していたことで、前月比で黒字幅の増加が見込まれている。昨日発表された日本の1月の上中旬の貿易赤字は、3兆1452億円となり、昨年同時期の1兆7097億円から84%増加しており、1月のドル円の下値を支える要因となっている。2022年の貿易赤字は19兆9713億円となり、過去最大を記録して円安要因となった。
 経常黒字は、2022年1-11月までで11兆4100億円で、2021年の21兆5910億円からほぼ半減している。経常黒字の縮小(貿易赤字拡大)は、円安要因、拡大(貿易赤字縮小)は円高要因となることで、今年も要注目となる。

 財務省は昨日、昨年10-12月分の日次ベースの介入実績を発表し、10月21日の介入金額が1日当たりで過去最大の5兆6202億円、10月24日の7296億円と合わせて、10月合計では6兆3499億円となり、月間での最大記録を更新していることが判明した。
 9月22日には2兆8382億円の介入が行われており、合計9兆1880億円のドル売り・円買い介入が実施されたことで、ドル円は昨年10月21日の高値151.95円から反落した。
 しかし、実需の円売りである貿易赤字は、年間で過去最大の19兆9713億円だったので、過去最大の円買い介入9兆1880億円でも、10兆円超打ち消すことが出来ず、ドル円が下げ止まる要因となっている。円買い介入の原資である外貨準備高は、1月末で1兆2502億ドル(@132円=約165兆円)もあることで、ドル円の上値は限定的なのかもしれない。



(山下)
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