東京為替見通し=口先介入が絶好の円売り機会に、元・豪ドルの動きにも要注目

 海外市場でドル円は、日米金融政策の違いが改めて意識されると円売り・ドル買いが優勢となり、一時144.62円と昨年11月以来の高値を付けた。ただ、買い一巡後はやや伸び悩んだ。ユーロドルは「フィキシングに絡んだドル買いのフローが観測された」との指摘もあり、一時1.0897ドルまで弱含んだ。

 本日の東京時間も円安基調は変わらずか。昨日も神田財務官を始め、財務省関係者や政府要人から円安けん制発言が伝わり、一時的に円が買い戻される場面があった。しかし、円が買い戻される場面は、むしろ絶好の円売りの機会を与え、実弾介入が無い限りは円安の流れを止めることが難しくなっている。また、本日の日経新聞にも指摘されているが、昨年9月の時とは日経平均の水準が違うこと、円安を利用したインバウンド客の増加などもあり、実弾介入は当面行われないとの思惑もある。このこともあり、円売りが遅れている投資家や企業は、市場の動きが円安に傾いたときの機会を狙っているとも伝わっている。

 昨日は欧米中銀関係者が今後の利上げを示唆した半面、植田日銀総裁は「基調的なインフレは目標を下回っている」と発言するなど、依然として利上げには慎重な姿勢を示していることも円安を根付かせている。もっとも、「刈り込み平均値」は加速方向となっていることもあり、植田総裁が見通しの修正を行う可能性もあることには、注意をしておきたい。
 
 円安方向は継続されそうだが、長期間為替介入が行われなった場合は、最初の介入は東京勢が参入している時間帯に行われる傾向があることや、昨年の最初に円買い介入が行われた9月22日のドル円の水準が145.90円に到達した後だったことを考えると、145円に近づいていることで東京時間は慎重にならざるをえず、円安のスピードは緩やかなものになるだろう。

 円以外の通貨では、人民元(CNH)と豪ドルの値動きに注目。昨日のドルCNHは一昨日の元買い介入の水準を大きく上回り、元の年初来安値を更新している。本日は日本時間10時過ぎに中国人民銀行が発表する基準値や、その後の元買い介入があるかなどが焦点になる。ドルCNHの値動きが他通貨にも影響を与えることがここ最近は多くなっていることで、注意を怠らないように見ておく必要がありそうだ。
 また、豪ドルは昨日発表された5月の消費者物価指数(CPI)が市場予想や前月から大幅に下回ったことで、欧米時間でも上値が重く推移した。豪ドルは元の動きにも敏感に反応するだけでなく、本日は豪州の小売売上高も発表されることで、より神経質な動きになりそうだ。

(松井)
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