東京為替見通し=ドル円、続伸か 米債格下げや円買い介入の可能性には要警戒

 25日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日米金利差の拡大を背景に堅調に推移し、148.96円までドル高円安が進んだ。米10年債利回りは一時4.54%台まで上昇している。ユーロドルは、米金利上昇やユーロ圏景気の減速懸念などから1.0576ドルまで下落した。ユーロ円は157.49円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日米の金融政策の方向性の違いから続伸が予想される。ただし、引き続き本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 また、米国議会での暫定予算案の採決の行方には注視する必要がありそうだ。米国に最高格付けを付与している唯一の格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが、米政府機関が閉鎖されれば米国の信用格付けにネガティブに反映されるだろう、と警告。議会では、今月末の期限までに2024年度(23年10月-24年9月)の歳出法案を通過させるのは難しい状況となりつつあり、来週以降に政府機関が閉鎖される可能性が高まりつつある。

 なお岸田首相は昨日、物価高対策や持続的な賃上げなどを柱とする経済対策の取りまとめを26日の閣議で指示。対策は来月中をめどに策定し、その後速やかに補正予算の編成に入ると首相は述べた。足元の円安進行については、「過度な変動は望ましくない」とした上で、引き続き高い緊張感を持って注視する考えを表明した。

 本邦通貨当局の昨年秋の3回のドル売り・円買い介入は、ボラティリティーの抑制を名目に実施された。円買い介入が実施された水準は、ボリンジャー・バンドの+2σ付近だったが、本日の+2σは149.16円付近に位置している。

 昨日は日銀の植田総裁と内田副総裁が、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、粘り強く金融緩和を継続する必要がある、との認識を示した。この両者は、7月の日銀金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の運用柔軟化を決定した後、「為替市場のボラティリティー抑制」が背景にあると述べていた。しかしながら昨日は、金融緩和の持続性を高めるため、だと述べている。
 
 ところで、国際決済銀行(BIS)が発表した2023年8月の実質実効為替レート(2020年=100)は73.19となり、1970年以来の低水準となった。すなわち、現状の円の実質実効為替レートは、1971年のニクソン・ショック以前の水準(1ドル=360円)まで低下したことになる。その一つの要因としては、8月のコアCPI(生鮮食品を除く)が前年比+3.1%、コアコアCPI(生鮮食品およびエネルギーを除く)が前年比+4.3%の物価情勢の元で、政策金利が31通貨中唯一のマイナス0.1%に据え置かれたままであることが挙げられる。

 日本の政策金利が31通貨中で唯一のマイナス0.1%であるため、低金利の円を調達して高金利の外貨で運用する「円・キャリートレード」が活発化しており、一部シンクタンクの試算によれば10兆円を超えてきているもよう。キャリートレードの全盛期は、2007年当時の20兆円であり、まだ半分に過ぎないが、昨年9月の円買い介入時の10.7兆円に迫りつつある。また、IMM通貨先物の非商業(投機)部門取組の円売り持ちポジションは、9月12日時点で円買い介入の目安である10万枚(=1兆2500億円)を超えてきている。

(山下)
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