東京為替見通し=ドル円、介入警戒水準150円の攻防か 米国の懸念材料にも注視

 27日のニューヨーク外国為替市場のドル円は日米金利差の拡大が意識され、昨年10月以来の高値となる149.71円までドル高円安が進行した。米10年債利回りは約16年ぶりの高水準4.64%前後まで上昇した。ユーロドルは、米長期金利の大幅上昇を受けて1.0488ドルまで下落した。ユーロ円は、欧州景気への懸念から一時156.96円まで下値を広げた。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日米の金融政策の方向性の違いから続伸が予想される。しかしながら介入警戒水準である150円に迫っていることで、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 昨日のニューヨーク市場のドル円は、米10年債利回りや原油価格の上昇を背景に、149.71円まで続伸。昨年秋のドル売り・円買い介入の目安とされてきたボリンジャー・バンドの+2σを超えてきた。先日、イエレン米財務長官が日本の為替介入について「過度な変動をならす必要性を総じて理解している」と述べており、本邦当局による実弾の円買い介入の可能性を意識しつつ、相場に臨むことになる。

 昨年の円買い介入について振り返ってみる。 
 ・2022年9月22日の第1弾の円買い介入(東京時間17時30分頃:2兆8382億円)では、ドル円は高値145.90円から安値140.36円まで、5.54円(3.8%)下落した。
 ・同年10月21日の第2弾の円買い介入(東京時間23時30分頃:5兆6202億円)では、ドル円は高値151.95円から安値146.23円まで、5.72円(3.8%)下落した。
 ・同月24日の第3弾の円買い介入(東京時間8時30分頃:7296億円)では、ドル円は高値149.71円から安値145.56円まで、4.15円(2.8%)下落した。

 なお、米国についても懸念材料は幾つか見あたる。パウエルFRB議長は、米景気に不確実性をもたらす大きな要因として「原油高、大規模ストライキ、そして政府機関の閉鎖」を挙げていた。カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁も昨日、政府機関の閉鎖、または自動車ストライキが長期化した場合には景気減速の可能性があるとし、「米連邦準備理事会(FRB)は物価上昇を緩和する手段を使う必要がなくなる」との見方を示した。

 昨日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物11月限は、クッシングの在庫の減少を受けて、1バレル当たり93ドルを突破し、100ドルが視野に入りつつある。原油高は、インフレ高進要因となることで、米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げ要因となる。

 全米自動車労組(UAW)は、米大手自動車メーカーとの労使交渉に大きな進展がなければ、明日29日にストライキを拡大すると表明した。

 米国政府機関の閉鎖に関しては、9月30日の会期末に向けて2024年度(2023年10月-2024年9月)の予算案成立が難航していることで、予断を許さない状況が続いている。

 リスクシナリオは、2013年10月のように政府機関が閉鎖された場合だろう。米労働省が9月の雇用統計、消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)などを発表できなくなる事態に陥る。すなわち、10月31日から11月1日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策決定の判断材料となる雇用・物価データが得られないため、利上げは見送られる可能性が高まることになるか。

 さらに先日、米国債の格付けを最上位としている米格付け会社ムーディーズが、米連邦政府の政府機関が閉鎖に追い込まれれば、米国債の「信用面でマイナスだ」と警告しており、米国債の格下げリスクが危惧される。


(山下)
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