東京為替見通し=ドル円、9月CPIを見極めつつ150円の攻防に要警戒か

 19日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、パウエルFRB議長の発言を受けて149.96円まで上昇後、米10年債利回りが4.88%台まで低下したことで149.68円付近まで下押しした。ユーロドルは1.0616ドルまで上昇した。ユーロ円は158.93円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、中東情勢の緊迫化を受けて有事のドル買いの様相を呈し始めていることで、150円台に上昇する局面では、本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開が予想される。

 昨日のパウエルFRB議長の講演では、タカ派見解「金融政策の一段の引き締めが正当化される可能性がある」により米10年債利回りは上昇したものの、複数の米連邦準備理事会(FRB)が言及しているハト派的見解「長期金利の上昇で利上げの必要性を低下」を受けて、年内の利上げ観測が後退している。

 8時30分に発表される9月全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)の予想は前年比+2.7%で、8月の同比+3.1%からの伸び率鈍化が見込まれている。8月の政府による電気・ガス価格激変緩和対策事業の影響を除いたコアCPIは4.1%上昇、日銀が注視している生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは4.3%となり、1981年以来の高水準だった5月と7月に並んでいる。一部報道で「日銀が物価見通しを上方修正する方向」と伝わっており、伸び率が予想に反して上昇していた場合には要警戒となる。

 神田財務官は、昨日、「為替はファンダメンタルに沿って安定推移が好ましいが、過度の変動があれば経済に悪影響があるため、適切な行動を取るというのは国際的に認められている」と述べた。
 昨年10月は、12-13日のG20財務相・中央銀行総裁会議の後、21日のニューヨーク市場(東京時間23時30分過ぎ)と24日のシドニー市場(東京時間8時30分過ぎ)でドル売り・円買い介入が実施された。今年も12-13日のG20会議の後に口先介入(鈴木財務相「為替は場合によって適切な対応が求められる」や神田財務官「為替介入で過度の変動に対抗する」)が行われていることで、要警戒となる。

 2022年10月20日のドル円は150.29円まで上昇していた。そして、21日には、151.95円まで上昇した局面で、ドル売り・円買い介入が実施された。
 当時、神田財務官は「投機筋によって為替が大きく変動し、国民生活、世界経済に悪影響を及ぼすのは容認できない」と述べていた。

 本日も引き続き、中東情勢に関するヘッドラインの要警戒となる。最悪のシナリオは、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで地上作戦を開始し、ハマスを支援するイランが参戦することで、第5次中東戦争、そして石油ショックが引き起こされることとなる。



(山下)
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