東京為替見通し=政府24年度利上げ織り込みや、植田総裁のKY発言には要警戒

 海外市場ではドル円は、11月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)やコアデフレーターが予想を下回ると、米連邦準備理事会(FRB)が2024年に利下げに踏み切るとの期待が高まり円買い・ドル売りが先行し141.89円付近まで下押しした。ただ、米長期金利の指標となる米10年債利回りが上昇に転じ、3.9193%前後まで上昇すると円売り・ドル買いが強まり、一時142.66円と日通し高値を付けた。ユーロドルは米物価指標の下振れで米インフレの鈍化が再確認されると、一時1.1040ドルと8月10日以来の高値を更新した。

 本日はクリスマスのため、日本と中国以外のオセアニア・アジア・欧州・北米の主要国が休場となり、市場はリスクを取りにくい状況だ。また、東京の為替市場も、東京市場の締めとされている日本時間15時半以後は、更に流動性が悪化すると見込まれている。

 通常ならばクリスマス・年末ということもあり市場が動意づくことは難しいのだが、本日のドル円相場は神経質な動きになる要素がある。一つ目のポイントは、22日に発表された2024年度予算案で、国債費の想定金利を23年度まで7年間続いた1.1%から1.9%に設定して、17年ぶりに引き上げたこと。すでに多くの報道で引き上げとなる可能性は報じられていたが、政府が今後の金利上昇を正式に織り込み始めたともいえ、アベノミクスの終焉により政府サイドも日銀によるゼロ金利政策解除を了承したともいえる。市場が今後どのようなスピードで、どこまで金利引き上げを容認するかを読み解く展開が予想される。

 二つ目のポイントは、本日は経団連の審議委員会で植田日銀総裁が講演を行う予定となっていること。植田総裁は、6月にポルトガルのシントラで開かれた欧州中央銀行(ECB)年次フォーラムでの総裁の発言が笑いを取ったことを、日本のマスメディアでは冗談と捉えられたようだ。しかしながら、海外メディアはデジタルトランスフォーメーションについての質問に対して、来年の新札発行について回答したことで、質問への回答にならず失笑を受けたとされている。
 そして、今月7日の「チャレンジング」発言も、質問が今後の金融政策についてではないにもかかわらず、市場に誤解を与える結果を招いた回答をしている。本日の講演でも、市場流動性も悪い中で、空気が読めず(KY)、誤解を招く発言をするリスクがあるのではないかと市場参加者は恐れている。

 また、主催する経団連の十倉会長も「消費税などの増税から逃げてはいけない」「消費税引き上げも有力な選択肢」などと述べるなど、国民のおかれた状況を認識できず、空気が読めないとの批判の声が多い。その十倉会長は先週18日に日銀のマイナス金利などの大規模緩和策について「できるだけ早く正常化すべきだ」と述べ、経団連が「前年以上の熱量で賃上げをめざす」と述べている。この発言に植田日銀総裁が気をよくして、再びチャレンジング発言のようなことを言いかねない可能性もあり注意したい。

(松井)
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