東京為替見通し=日銀によるYCC修正の有無を確認後、植田総裁会見に要注目

 27日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、好調な米経済指標を受けて米10年債利回りが4.02%台まで上昇したことで141.32円まで買いが先行。しかしその後、「YCCの修正案を議論」との報道で138.77円まで急落した。ユーロドルは欧州中央銀行(ECB)が0.25%の利上げを決定したものの、声明がハト派だったことで1.0966ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場では、まず日銀金融政策決定会合でのイールドカーブコントロール(YCC)修正の有無を確認。その後は、15時30分から予定されている植田日銀総裁の会見に注目する展開となる。

 日経新聞電子版が昨晩、「日銀は28日に開く金融政策決定会合でYCCの修正案を議論する」「長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上」と報じた。これにより、変則的ながらもYCC上限が拡大される可能性が高まっている。

 植田日銀総裁は18日に「持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらない」と述べ、YCCの修正観測を後退させていた。

 しかし、植田総裁の発言「認識に変化がなければ」を深読みすると以下の通りに解釈できる。
・前提:物価安定の目標には、まだ距離があるとの「認識」がこれまであった
・現状認識:前提に変化がないとの「認識」で、YCCを続けてきている
・必要条件:前提が変わらない限り、YCCを続けるスタンスは変わらない

 この「認識に変化がなければ」という前提条件が変化している可能性は、以下の通りに列挙できる。
・内閣府が、今年度の消費者物価指数の見通しを前年比+2.6%に大きく引き上げた。
・7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、物価見通しが現状の+1.8%から+2.5%へ引き上げられる可能性が報じられた。
・6月の消費者物価指数の前年比上昇率は+3.3%となり、15カ月連続で目標の2%を上回っている。

 さらに、前提が変化していることへの言及は以下の通りに列挙できる。
・7日の内田日銀副総裁の発言「YCCは、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」
・13日の早川元日銀理事の発言「YCCにおける長期金利の変動幅を拡大する政策修正を行う可能性がある」
・6月の日銀決定会合の「主な意見」での見解「早い段階で見直しを検討すべきだ」
・24日の神田財務官の発言「日本の物価・賃金の動向、最近のデータは予想より上振れしている」
・25日のIMFのレポート「日本銀行に対して現在のYCC政策から脱却するよう提言」

 15時半からの植田日銀総裁の会見では、金融政策ではない長期金利の操作「YCC」許容変動幅拡大とフォワードガイダンスの説明に注目することになる。

(山下)
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