東京為替見通し=ドル円、底堅い展開か、植田日銀総裁の緩和継続発言で

 10日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、133.87円まで上昇した。植田日銀総裁が就任記者会見で現行の大規模金融緩和策について「継続することが適当」と述べたことや、米連邦準備理事会(FRB)が5月に追加利上げを実施するとの観測が広がったことなどが円売りドル買いにつながった。ユーロは対ドルで1.0831ドルまで下落した一方、対円では145.16円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、昨日の植田日銀総裁の就任会見を受けて当分の間は金融政策修正の可能性が低下したことで、底堅い展開が予想される。

 植田総裁の発言を受けて、4月27-28日の日銀金融政策決定会合での現状の金融緩和政策維持の可能性が高まった。これを受けドル円は昨日、日足一目均衡表・基準線133.78円を上抜けて133.87円まで上昇。この上昇トレンドが継続するには、明日発表される米国3月の消費者物価指数(CPI)が、同月米連邦公開市場委員会(FOMC)でのドット・プロット(金利予測分布図)を正当化させる内容が必要だろう。すなわち、5月FOMCで0.25%の追加利上げで5.00-25%まで上昇し、年末まで高止まりする可能性を高めなくてはならない。

 CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、5月2-3日FOMCでの0.25%の追加利上げ確率は70%程度まで上昇している。しかしながら、12月12-13日のFOMCでは4.25-50%へ引き下げられる確率が高くなっており、3月FOMCでのドット・プロットの5.00-25%とは0.75%の乖離だ。これがドルの上値を抑える要因となっている。

 昨日の就任会見で植田総裁は、「日銀の使命である物価の安定と金融システムの安定の実現に向け、力を尽くしてまいりたい」と述べ、現行のイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)やマイナス金利の継続が適当だと述べた。そして、岸田首相との会談で、2013年の政府・日銀の共同声明について「直ちに見直す必要はないという点で一致した」と述べた。

 今後の金融情勢次第だが、4月27-28日の新日銀総裁にとっての初めての日銀金融政策決定会合から6月辺りまでは、金融政策の正常化に踏み切る可能性は低下した。市場は、日銀新体制の下でのYCCの許容変動幅の再拡大や撤廃の可能性を警戒していたため、植田日銀総裁の現状維持発言で払拭されたことになる。

 植田総裁は、需給ギャップが低迷している状況下では、2%のインフレ目標の達成は困難と述べた。日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差である「需給ギャップ」は、2022年10-12月は11期連続のマイナスを記録しており、「デフレギャップ」の状態が続いている。そして、マイナス金利政策についても、基調的なインフレ率が2%に達してない中では、継続するのが適当だ、と述べている。

(山下)
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