東京為替見通し=ドル円、3月の日米金融政策転換の見送り観測から堅調推移か

 8日のニューヨーク外国為替市場でドル円は149.48円まで上昇した。内田日銀副総裁発言で日銀の低金利政策が続くとの見方や米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測の後退がドル買い円売りに繋がった。ユーロドルは、欧州中央銀行(ECB)高官から早期利下げ観測をけん制する発言が相次いだことで1.07ドル半ばから1.0783ドル付近まで持ち直した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、3月の日米金融政策転換の見送り観測から上値を探る展開が予想される。

 昨年のドル円は、早期の米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始と日銀によるマイナス金利解除観測から、昨年11月13日の高値151.91円から12月28日の安値140.25円まで11.66円下落した。ただし今年は、パウエルFRB議長や内田日銀副総裁の発言で日米金融政策の早期転換観測が後退。これを背景に、昨年の下落幅の76.4%戻し(149.16円)を上回り、全値戻しの可能性が高まりつつある。なお、昨年11月13日のドル円の高値151.91円の時の米10年債利回りは4.696%まで上昇しており、今後も米10年債利回りの動向を見極めて行くことになる。

 今週のドル円は、5日にパウエルFRB議長の発言「3月以降まで利下げに踏み切るのを待つ公算が大きい」を受けて、148.89円(※米10年債利回り4.16%)までドル高が進行。昨日8日は内田日銀副総裁の発言「緩和的な金融環境を維持していく」の後、年初来高値となる149.48円(※米10年債利回り4.17%付近)まで上げ幅を拡大した。

 内田日銀副総裁は、企画局長(2012年~17年)として、雨宮日銀前副総裁とともに、黒田第31代日銀総裁が打ち出した「大規模な量的・質的金融緩和政策」(2013年4月)や「マイナス金利政策」(2016年1月)、「イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)」(2016年9月)政策の企画・立案に関与してきたキーパーソンである。

 内田副総裁は、昨日、マイナス金利解除後の短期政策金利について、今後の経済・物価情勢次第になるとしながらも、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していく」とのハト派的な見解を示した。

 もっとも同副総裁は、1月の日銀金融政策決定会合の「主な意見」、経済・物価情勢の展望(展望リポート)、植田日銀総裁などによる物価見通し実現の「確度」が高まりつつあるとの見解には同意していた。さらに、「今年の賃上げは、昨年より強い可能性がある情報がそろっている」と述べたことで、春闘での賃上げの結果次第では、3、4月の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利の解除やYCCの撤廃の可能性は残されているのかもしれない。

 ドル円の懸念材料としては、イエレン米財務長官が警鐘を鳴らしつつある商業用不動産の低迷を受けたノンバンクの経営破綻の可能性があり、関連ヘッドラインには警戒しておきたい。昨年はシリコンバレー銀行などの経営破綻により金融市場が動揺させられた。

(山下)
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