東京為替見通し=ドル円、3月日銀短観を見極めつつ円買い介入には引き続き要警戒か

 29日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、2月米個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)が予想通りの前年比+2.5%だったことで151.18円まで弱含みに推移したものの、パウエルFRB議長が「利下げを急ぐ必要はない」と述べたことで下げ渋る展開となった。ユーロドルは米インフレ指標発表後に1.0805ドルまで買われた後、パウエルFRB議長の発言で1.0787ドル付近まで反落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、3月調査の日銀短観を見極めた後は、引き続き本邦通貨当局のドル売り・円買い介入の可能性に警戒する展開が予想される。

 8時50分に発表される3月調査の日銀短観では、大企業製造業業況判断指数(DI)は10と予想されており、前回発表値の12からの低下が見込まれている。大企業製造業DIの低下は、日銀の緩和的な金融環境の継続を裏付けることで、数値次第では円売り材料視される可能性に警戒しておきたい。

 ドル円は、先週、1990年以来の高値となる151.97円まで上昇した後、三者会合(財務省・日銀・金融庁)が開催され、神田財務官が為替介入について「常に準備はできている」と述べたことで、円買い介入への警戒感が高まっている。

 2022年9月22日のドル売り・円買い介入の前も、9月7日に144.99円まで上昇した後の9月8日に三者会合が開催され、神田財務官が「(為替介入などの対応は)スタンバイな状態だ」と警告していた。さらに、日銀が大規模緩和の見直しを決定した後の円安の動きは「反対方向という意味で強い違和感を持っている」とも述べている。
 おそらく、145円台に乗せた場合には円買い介入を行うことが話し合われ、22日の145円台乗せでの円買い介入となったことが推測できるため、今回も152円台に乗せた場合の円買い介入の可能性には警戒しておきたい。

 神田財務官は、投機的な円売りやボラティリティーの上昇を円買い介入の大義名分にしていた。現状のドル円のボラティリティーを示唆するボリンジャー・バンド+2σは153.16円付近なので警戒水準ではないが、3月26日時点の投機筋の円売りポジションを示唆するIMM円売り持ち高は129106枚となっている。

 また、ドル円が150円台での円安基調が続いた場合、輸入物価上昇の価格転嫁による物価上昇圧力「第1の力」が再浮上する可能性が高まることで、インフレへの警戒感が台頭する。植田日銀総裁は、物価を押し上げる主役が「第1の力」から「第2の力」に徐々にバトンタッチし、賃金と物価の好循環が強まっていく姿をメインシナリオと考えており、「第1の力」が再浮上することは、追加利上げの可能性を高めることになる。

 3月の日銀金融政策決定会合の後、植田日銀総裁は「基調的物価上昇率がもう少し上昇すれば、短期金利の水準の引き上げにつながる」と述べていた。
 すなわち、円安による輸入インフレへの懸念が高まれば、先日から市場で話題になっている「日銀の追加利上げ『10月』、『7月』観測」が現実味を帯びることになる。



(山下)
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