東京為替見通し=米当局者による介入けん制で円安継続、当局者間の意思疎通欠如の噂も
昨日の海外市場でドル円は、前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容だったことが分かると買い戻しが優勢に。5月米製造業・サービス部門PMI速報値が予想を上回ったことも相場の支援材料となり、一時157.20円と1日以来約3週間ぶりの高値を付けた。ユーロドルは1.0805ドルまで弱含んだ。
本日のドル円相場も引き続き円安地合いが継続されそうだ。昨日からイタリア・ストレーザで主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が始まったが、議題は多岐にわたり特段為替について言及されることなどはないだろう。
昨日会合前にイエレン米財務長官が「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」と改めて言及した。本邦当局者が「G7の国の通貨は市場で決定されるべき」という原則を無視して、介入を指示することは難しく、引き続き円は売られやすい状況だ。更にイエレン氏は「介入に踏み切る際には事前の伝達が必要」と今回も発言したことは、4月末と5月初旬の介入観測について「本邦当局者が米国サイドに伝達をしなかったことにたいして不快感を示している」とのうわさもある。バイデン政権がインフレ圧力の緩和に苦労している中で、当局者が意思疎通を怠りドル売り介入を指示したとしたら、インフレ高進につながる自国通貨(ドル)売りに対して米国サイドは更に抵抗色を強めるだろう。
また、昨日は中国人民銀行(PBOC)が、人民元取引の基準値を1月以来の元安水準に設定した。これまで中国は7.25元超えで自国通貨の防衛をしていたが、防衛ラインより元安に動いたことで、中国が一定の元安を放置したとの憶測もある。この状況下で円だけ防衛するのが更に難しくなりそうだ。
なお、週末にかけては「G7声明、日本の主張を踏まえて為替のコミットメントを再確認」などと本邦当局者からの声が聞こえてくる可能性もある。しかし、本邦当局者や国内の通信社だけの報道では真偽を確かめるのが難しい。これまでも、様々な首脳会談で国内外の報道では、報じている内容の強弱や、内容そのものの相違があった。特に本邦当局が円安対応に苦慮していることで、円安是正など大袈裟に報じられた場合は、国外も同様に報じられているかを確認するまでは、鵜呑みにするのはリスクがありそうだ。
本日は本邦の4月全国消費者物価指数(CPI)が発表される。同月の生鮮食料品除いた東京都区部コアCPIは前月の2.4%から1.6%に急低下したこともあり、全国のコアCPIも2.6%から2.2%へと低下すると予想。更にエネルギーを除いたコア・コアCPIは2.9%から2.4%まで低下予想になっている。今週に入り本邦金利は高水準を記録し、昨日は国債購入が未達になった。しかし、市場予想よりもさらに下振れた場合は、本邦の債券利回りが低下し、円売りに反応する可能性が高い。一方で、予想を上振れた場合は円が買われるだろうが、為替市場は米国が当面政策金利を据え置くとの認識が高まっていることで、本邦金利の上昇に連れにくくなっている。よって、円買いの反応は短命に終わりそうだ。
また、昨日厚労省が発表した2023年度の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は、前年度比-2.2%となり、消費税増税の影響で物価が上昇した2014年度以来、9年ぶりの大きさを記録した。実質賃金が低下する中で、本邦金利が大幅に上がるとは考えにくいことも円売り要因として残る。
なお、オセアニア通貨が今週はボラタイルに動いていることで、本日も値動きに注目したい。早朝に4月のニュージーランド貿易収支が発表された以外は、本日は主だった経済指標の発表予定はない。しかしながら、オセアニア通貨は株価の値動きなどのリスク許容度に敏感に反応することで、本日は大幅反落の可能性もある日経平均や米株指数先物の動きにオセアニア通貨も連れそうだ。
(松井)
本日のドル円相場も引き続き円安地合いが継続されそうだ。昨日からイタリア・ストレーザで主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が始まったが、議題は多岐にわたり特段為替について言及されることなどはないだろう。
昨日会合前にイエレン米財務長官が「為替介入はめったに使用されない手段であるべき」と改めて言及した。本邦当局者が「G7の国の通貨は市場で決定されるべき」という原則を無視して、介入を指示することは難しく、引き続き円は売られやすい状況だ。更にイエレン氏は「介入に踏み切る際には事前の伝達が必要」と今回も発言したことは、4月末と5月初旬の介入観測について「本邦当局者が米国サイドに伝達をしなかったことにたいして不快感を示している」とのうわさもある。バイデン政権がインフレ圧力の緩和に苦労している中で、当局者が意思疎通を怠りドル売り介入を指示したとしたら、インフレ高進につながる自国通貨(ドル)売りに対して米国サイドは更に抵抗色を強めるだろう。
また、昨日は中国人民銀行(PBOC)が、人民元取引の基準値を1月以来の元安水準に設定した。これまで中国は7.25元超えで自国通貨の防衛をしていたが、防衛ラインより元安に動いたことで、中国が一定の元安を放置したとの憶測もある。この状況下で円だけ防衛するのが更に難しくなりそうだ。
なお、週末にかけては「G7声明、日本の主張を踏まえて為替のコミットメントを再確認」などと本邦当局者からの声が聞こえてくる可能性もある。しかし、本邦当局者や国内の通信社だけの報道では真偽を確かめるのが難しい。これまでも、様々な首脳会談で国内外の報道では、報じている内容の強弱や、内容そのものの相違があった。特に本邦当局が円安対応に苦慮していることで、円安是正など大袈裟に報じられた場合は、国外も同様に報じられているかを確認するまでは、鵜呑みにするのはリスクがありそうだ。
本日は本邦の4月全国消費者物価指数(CPI)が発表される。同月の生鮮食料品除いた東京都区部コアCPIは前月の2.4%から1.6%に急低下したこともあり、全国のコアCPIも2.6%から2.2%へと低下すると予想。更にエネルギーを除いたコア・コアCPIは2.9%から2.4%まで低下予想になっている。今週に入り本邦金利は高水準を記録し、昨日は国債購入が未達になった。しかし、市場予想よりもさらに下振れた場合は、本邦の債券利回りが低下し、円売りに反応する可能性が高い。一方で、予想を上振れた場合は円が買われるだろうが、為替市場は米国が当面政策金利を据え置くとの認識が高まっていることで、本邦金利の上昇に連れにくくなっている。よって、円買いの反応は短命に終わりそうだ。
また、昨日厚労省が発表した2023年度の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は、前年度比-2.2%となり、消費税増税の影響で物価が上昇した2014年度以来、9年ぶりの大きさを記録した。実質賃金が低下する中で、本邦金利が大幅に上がるとは考えにくいことも円売り要因として残る。
なお、オセアニア通貨が今週はボラタイルに動いていることで、本日も値動きに注目したい。早朝に4月のニュージーランド貿易収支が発表された以外は、本日は主だった経済指標の発表予定はない。しかしながら、オセアニア通貨は株価の値動きなどのリスク許容度に敏感に反応することで、本日は大幅反落の可能性もある日経平均や米株指数先物の動きにオセアニア通貨も連れそうだ。
(松井)