東京為替見通し=ドル円、上値が重い展開か 米10年債利回りの低下を受けて

 3日のニューヨーク外国為替市場でドル円は155.95円まで下落した。ユーロドルは欧州市場の安値1.0828ドルから1.0905ドルまで反発。予想を下回った5月米ISM製造業景況指数で米10年債利回りが4.38%台まで低下したことで、ドル売りが進んだ。ユーロ円はドル円につれて一時169.72円まで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、5月米ISM製造業景況指数などの悪化を受けて米10年債利回りが低下していることで上値が重い展開が予想される。

 今月の米国の重要イベントは、昨日発表された5月ISM製造業景況指数や7日に発表される同月雇用統計を受けた11-12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)となっている。経済指標の改善や悪化に関わらず、FOMCでは金融政策の維持が見込まれており、注目ポイントはドット・プロット(金利予測分布図)での利下げ回数が3回のままなのか、それとも1-2回へ減るのかとなる。

 経済指標の影響は、利下げ開始時期や年内の利下げ回数を左右するのみであり、5月のISM製造業景況指数の悪化を受けて、「フェドウオッチ」での利下げ開始は、9月のFOMCとなった。12月FOMCでも追加利下げが見込まれていることで、年末のFF金利誘導目標は4.75-5.00%となっている。

 日本の注目イベントは、追加利上げや国債買い入れオペの減額、撤廃が警戒されている13-14日の日銀金融政策決定会合。また、レパトリ減税が警戒されている今月末の経済財政運営と改革の基本方針(「骨太の方針」)も注視されており、ドル円の上値を抑える要因となっている。

 先月末に明らかにされた4月29日と5月2日の本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入の金額は、9兆7885億円と発表された。 一方、実需筋の1-4月の確認できる円売りは、投資信託経由の対外証券投資(新NISAなど)の約4.3兆円、貿易赤字の約2.22兆円などで、6.52兆円程度。また、投機筋の円売り持ちポジションの目安であるIMM通貨先物の非商業(投機)部門取組のネットの円売り持ちポジションは、4月30日時点で168388枚(x1250万円=約2.1兆円)だった。

 すなわち、確認できる円売り圧力は実需と投機を合わせて8.62兆円程度となり、円買い介入の9兆7885億円との売り買いの攻防により、157円台までの反発とも考えられる。
 
 ドル円の160円が本邦通貨当局が死守するレッドライン(本丸)ならば、4月29日(推定約5.6兆円)の第1弾介入の159円台は内堀、第2弾介入と5月2日未明(推定約4.1兆円)の第3弾介入の157円台は外堀と捉えることもできるのではないか。
 
 本邦通貨当局による円買い介入以降の反発が外堀の157円台で留まっているのは、日銀の金融政策正常化への警戒感や骨太の方針でのレパトリ減税への警戒感によるものだと思われ、当面は上値が重い展開を想定せざるを得ないのかもしれない。


(山下)
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