東京為替見通し=ドル円、日米10年債利回り動向や中村日銀審議委員の発言に要注目

 5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は一時156.48円まで上昇し、ユーロドルは1.0891ドルから1.0854ドルまで弱含みに推移した。5月米ISM非製造業景況指数が53.8と予想の50.8を上回ったことでドル買いが強まった。ユーロ円は170.02円まで上げ幅を拡大後に上昇が一服した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、中村日銀審議委員の発言や4.2%台に低下している米10年債利回りや1.0%付近の日本の10年国債利回りの動向を睨みながらの展開が予想される。

 ドル円は、4日には154円台まで下落。日銀金融政策決定会合で国債の買い入れ減額を検討するという観測報道で、一部ヘッジファンドが円の売り持ちポジションを手仕舞ったとの噂が聞かれた。オプション市場では、来週の日銀会合での円高リスクをヘッジするため、円コール・オプションの取引が話題になっていた。

 しかしながら昨日は、毎月約1兆円とされる新NISA(少額投資非課税制度)の円売りや日本の10年国債利回りが1%を割り込んだことなどで156円台を回復し、往って来いの相場展開となっている。

 5月27日の植田日銀総裁と内田日銀副総裁の発言、19日の安達日銀審議委員の見解、6月4日の日銀関係筋からの報道を受けて、日銀金融政策決定会合での金融正常化への警戒感が高まっている。本日は、10時半からの中村日銀審議委員の発言内容に注目しておきたい。

 昨日は4月実質賃金が前年比-0.7%と発表され、25カ月連続でマイナスを記録したものの、マイナス幅は2022年10月の-0.6%以来の小幅な縮小率に留まった。また、所定内給与は+2.3%と発表され、1994年10月以来の伸び率を記録しており、今夏以降の実質賃金のプラス圏への浮上が見込まれている。

 しかし、実質賃金が25カ月連続で前年比マイナスを記録し、1-3月期実質国内総生産(GDP)がマイナス成長となっていることで、来週の日銀会合では、金融政策の正常化が見送られて現状維持となる可能性が残されていることも円売り要因となったのかもしれない。

 今後の重要な経済指標やイベントでのシナリオは以下の通りとなる。
・6日:欧州中央銀行(ECB)理事会
 利下げが決定された場合は、ユーロ売り・ドル買い、そしてユーロ売り・円買いとなる可能性。
・7日:米5月雇用統計
 労働市場の逼迫が示された場合は、米金利上昇とドル上昇となり、年内の利下げ見通しが、現在の2回から1回となる。悪化していた場合はドル下落となり、年内の利下げ見通しは2回のままか。
・11-12日:米連邦公開市場委員会(FOMC)
 政策金利据え置きはほぼ既定路線、注目ポイントはドット・プロット(金利予測分布図)での利下げ開始時期と利下げの回数となる。
・13-14日:日銀金融政策決定会合
 金融政策の現状維持が決定された場合は、円安要因、追加利上げ(+0.15%~0.25%)が決定された場合は円高要因となる。6兆円程度の国債買い入れオペの減額に関しては、5兆円程度ならば円安抑制要因、4兆円以下ならば円高要因となる。
・21日:経済財政運営と改革の基本方針(「骨太の方針」)
 円安による輸入物価上昇を抑制するために「レパトリ減税」が盛り込まれた場合は円高要因、なければ円安要因となる。

(山下)
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