週間為替展望(ドル/ユーロ)-日米金融政策の先行きが不透明

◆ドル、トランプ前大統領の言動で上下に振らされる可能性
◆円、海外勢中心に日銀の早期利上げへの思惑高まる
◆ユーロ、ECB理事会も終わり取引材料に乏しい

予想レンジ
ドル円   155.00-160.00円
ユーロドル 1.0750-1.1150ドル

7月22日週の展望
 ドル円は、トランプ前米大統領のドル高けん制発言や日銀の早期利上げに対する思惑から神経質な展開が想定される。今週はトランプ氏の言動に大きく振らされる展開となった。13日に行われていた選挙集会で狙撃されながらも、拳を突き上げるパフォーマンスを見せ、大統領選勝利が一層近づいたとの認識から今後の米金利上昇・ドル高が予想された。ただ、16日に「米国がドル高により大きな問題を抱えている。対ドルでの円安や人民元安がはなはだしい」とドル高を強くけん制したことから一転してドル安・円高が進むことになった。次期大統領の最有力候補であるトランプ氏の発言で積極的にドルを買いづらくなった面があるが、一方で利下げについて「11月の大統領選挙前にやってはならないことだ」とし、「正しいことをするならばパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長には任期を全うさせる」考えを示した。利下げは早くても12月と示唆したかたち。すでに9割以上も利下げが織り込まれている9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエルFRB議長が政治的配慮などから金利を据え置く可能性にも留意しなければならないだろう。

 トランプ氏自体がドル安を望む一方で、すでに年内3回の利下げを織り込む市場に対して選挙前の利下げ回避を望むなど、両極端な見解を示している。年後半のドル相場を予測することは非常に難しくなったことは確かだろう。

 また、河野デジタル相が「日銀に利上げを要求した」と発言。30-31日の日銀金融政策決定会合での利上げ観測が浮上していることが円相場を不安定にさせる要因となっている。河野氏は海外勢から見れば次期首相候補とされており、今回の発言が早期利上げに対する思惑を高めたが、国内では「過剰反応なのでは」との冷静な声も多い。来週には日銀会合に関する観測報道が出る可能性もあり、現時点で一段の引き締めを織込むには時期尚早と思われる。

 ユーロドルは、ドルの動向に左右される展開となりそうだ。欧州中央銀行(ECB)は18日の理事会で政策金利を据え置き、ラガルドECB総裁は記者会見で「9月にどうするかはまだ決まっていない」と強調した。あくまでも「今後のデータ次第」としたことでユーロは取引材料に乏しく、ドルの動きに振らされることが想定される。

7月15日週の回顧
 ドル円は週半ばまでは158円を挟んで方向感なく推移していたが、17日にはトランプ氏のドル高けん制発言や河野デジタル相の日銀に対する利上げ要求発言を受けて急落。翌日の東京市場では一時155.38円まで下落する場面があった。ただ、その後は急ピッチで下げた反動から157円台半ばまで持ち直した。ユーロドルはトランプ氏の発言で一時1.0948ドルと3月14日以来の高値を付けた。ただ、ECB理事会後に独長期金利が低下すると1.08ドル台後半まで失速した。(了)
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