東京為替見通し=ドル円、日米株価指数や米長期債利回り下落で下値リスクに警戒

 6日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、8月米雇用統計を受けて144.01円まで上昇後、141.78円まで下落。戻りは142円後半までだった。ユーロドルは1.1155ドルから1.1066ドルまで売られた。ユーロ円は日米株価指数の下落に伴うリスク回避の円買いで157.47円までユーロ安円高が進んだ。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日米株価指数の下落や米長期債利回りの低下を受けて下値リスクに警戒する展開が予想される。

 8月米雇用統計(非農業部門雇用者数:前月比+14.2万人、失業率:4.2%)の後、タカ派のウォラーFRB理事が「新たに入ってくるデータ次第で継続的利下げだけでなく、大幅利下げを支持する可能性」と述べた。これにより、11日に発表される米8月消費者物価指数(CPI:予想前年比+2.6%、7月同比+2.9%)への警戒感が高まっている。

 CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げ(※FF金利:5.00-25%)が開始され、11月FOMCでは0.50%利下げ(※FF金利:4.50-75%)が見込まれている。12月FOMCでも0.50%の利下げ(※FF金利:4.00-25%)を見込む向きが増えてきた。

 米8月CPIが予想通りにインフレ率の鈍化を示す内容だった場合は、9月FOMCでの0.50%の利下げ開始の可能性が高まるため、11日まではドル円の上値は限定的だと思われる。

 本日8時50分に発表される4-6月期実質国内総生産(GDP)改定値は、速報値の前期比+0.8%から横ばい、年率+3.1%からは+3.2%へ小幅に上方修正されるとの予想。設備投資(民間企業設備)や公共投資(公的固定資本形成)の上方修正が見込まれており、予想通りならば、植田日銀総裁のタカ派的な見解「経済・物価見通し実現の確度が高まれば、金融緩和の度合いを調整する」を裏付けることで、追加利上げ観測を高めて円買い要因になる。

 政策金利(0.25%)からインフレ率(※7月:+2.7%)を差し引いた実質金利(-2.45%)をマイナス圏に放置したままでは、円安と輸入インフレが再発する可能性が高まることになる。そこで日銀は、金利の壁である0.50%を超えた中立金利水準の1.00%付近までの追加利上げを続ける可能性が高いと思われる。

 10時30分に発表される8月中国CPIは前年比+0.7%と予想されており、7月の同比+0.5%からは伸び率上昇の見込み。同月中国生産者物価指数(PPI)は同比-1.4%と、7月の同比-0.8%からは伸び率の鈍化予想だ。

 中国政府は、不動産市況の低迷による消費者心理の悪化を打破するため、積極的な財政出動と緩和的な金融政策で内需拡大を目論んでいるが、米国との第2次貿易戦争への警戒感が懸念材料となっており、ディスインフレからの脱却の目途が立っていない。先週、人民銀高官が預金準備率(RRR)には「さらなる引き下げの余地がある」と発言しており、警戒しておきたい。

(山下)
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